『揚羽蝶』 四/二 大丈夫だ。 この家政婦は、俺に興味が無い。 決められた事しかしない人だ。 深く追究したり、一々告げ口したりはしない。 離れに戻ると、縁側に腰を掛けた。 彼女は…着替え終わっただろうか? 心地良い風が頬を掠めた。 が、少し肌寒い。 よく考えると、着替えるのを忘れていた。 寝間着のままだ。 「格好悪い…。」 もしかして、他人に服を貸している場合じゃなかったか? へっくしゅん! 大きなくしゃみと同時に、部屋の戸が開いた。 「!………(ぺこ。)」 「あ、どうも…」 戸の隙間から恐る恐る顔を出した彼女は、軽く頭を下げるとそこで固まっている。 「…」 「……」 どうしよう…。 よく考えると、年上以外の女の人と話すのは初めてだ。 そればかりか、同じ年頃の人間に会ったのも初めてかもしれない…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |