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「あーやー!」
「おはようございます、マリーさん」
「え゛っ、なにそのうっすいリアクション…嬉しくない」
嫌そうな顔をしたマリーは冷たい彩を揺さぶる。毎朝のことなので彩のスルースキルは抜群に上がっている。
「いつも通りです」
「冷たいなぁー。あ、そういえばさ。この前の噂聞いたよ」
「?」
「ほら、徹がグループ潰したやつ。彩を危険に晒すなんてあいつなんなのー?しかも爆弾って」
マリーの言葉に彩は首を捻る。先日、先輩達が話していた徹がキレてグループを潰したことの元凶は爆弾だと繋がることは理解できる。しかしなぜ彩自身の危険に繋がるのか、それがわからない。
「?…どうしてグループ潰した事と俺が危険に晒されるのが関係あるんですか?」
一瞬止まるマリー。
「……あっ、そっか…」
徹がいつもは無視するちょっかいを今回そうしなかったのは、彩が狙われる可能性が大きく守る為だ、と事務課では勝手になっている。しかしそれを彩は知らない。
これは事務課の妄想と言っても過言ではない。だから当事者の彩は知らなくてよかったのだ。今のはマリーの失言だった。
「忘れて、じゃ!」
ダッと逃げ出すマリーを彩は素早く掴んだ。いつもならあり得ない彩との距離にマリーは興奮するが、口を滑らせないようになんとか耐える。
「教えてください」
「あぁああぁ、彩が近い近い近い近い、どうしようどうしよう」
「何言ってんですか、教えて下さいって」
冷たく言い放つ彩に更に興奮したのかマリーは馬鹿みたいに口走る。
「ああぁ、徹は彩を守るためにキレてグループ潰しただなんて、仮定をみんなの妄想で加工したこんな話、できるわけないじゃ、……あ」
言って気づいたマリーは口を押さえて彩を見つめた。その彩はというと間を置き疑問の表情を浮かべた。
「え、えっ?徹が俺を?」
なんやかんやで全てを懇切丁寧説明したマリー。話の終わり頃には彩の表情は暗く、悩む仕草をしていた。
「……もしかして、俺、徹に迷惑、かけてました?」
「……は?え?まってまってなんでそうなるの!?」
「だってそうですよね…」
――きっと貧民窟で俺が今生さんの所に誘ったのだって泣いたのだって迷惑だったんだ。俺一人勝手に徹の側は居心地がいいって思ってたんだ。
「あ、彩?」
「……仕事、してきます」
サッと去っていく彩の背中を眺めマリーは一言呟いた。
「あたし嫌な奴になっちゃったじゃん…」
それから、1週間もしない内に徹は事務課に姿を見せなくなった。
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