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バタンと扉の閉まる音が聞こえた。
「……ん…?」
その音で彩は目が覚める。ベッドの上にいるが、いつもと違う感触に違和感を感じ周りを見渡した。広い部屋に大きなベッド、それは徹の家で見たものだ。そして漸く、爆発の後の記憶が途切れたことから気絶したことに気づく。
「あ、気がついた?」
「徹…」
寝室の扉から現れたのは徹で、雰囲気が少しキツいように彩は感じた。
「大丈夫?どこも怪我してないけど、耳とか痛かったりする?」
徹が心配そうに彩へ近づいていく。いろいろ質問されるがそれよりも彩は気になることがあった。
「徹…?」
「ん?何」
「どうしたの?」
徹の雰囲気がいつもと違うことが気にかかってしょうがなかった。
「なんか、イライラしてる?」
徹は笑うがそんなことないようには彩には見えなかった。
「今イリアに呼ばれて仕事任されたから不機嫌なのかもな」
彩が目が覚めるきっかけとなった扉の閉まる音は、徹がイリアに呼び出され帰ってきたときによるものだった。
「イリアって……幹部のイリアさんッ!!?」
平然と肯定する徹に更に驚かされる。幹部のイリアと言えば【illwill】の頭そのものだ。厳しく、嫌味ったらしいことで有名で反抗しようとする者は【ill will】では一人もいない。敬意と恐怖を踏まえてみんな“イリアさん”と呼ぶ。
徹は呼び捨てにした上、イリアから直々に仕事を貰ったのだから驚く他無いだろう。イリアが直接渡す仕事といえばLv.壹では荷が重く不可能だとも言われ、Lv.零にしかできないという伝説だ。
「ん。で、その仕事が今からなんだよ。てかもう9時前だけど」
「9時前って、え゛っ!?遅刻!」
「彩…行くの?」
「当たり前じゃん!洗面所借りるから!」
寝起きとは思えない素晴らしく素早い彩の動き。寝室を出て、洗面所へ向かう中、ちらりと玄関が見えた。
爆発の後、そこは焼け跡で黒かったはずだ。玄関があまりにも普通で綺麗なものだから、爆発が嘘だったかのように錯覚してしまう。だが爆発は確かにあった。
しかし時計が目に入り本気で遅刻すると急ぐせいで、徹の家を出るころにはすっかり忘れてしまっていた。
彩が寝室を出た後、徹の目からは珍しくやる気が色づき手に力を込めた。
「そうか…」
それは何かから何かを守ろうと必死な表情だった。
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