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【side白木 宵千】
「ねぇ、私もう、限界なんだけど」
「………申し訳ありません」
目の前の幹部もといSM女王は黒皮のブーツを履いた足を組んで、机をトントンとイラつきを交えて叩く。
こういうときはひたすら謝るに限る、と幹部室に呼ばれた俺はは頭を下げた。
「あら、あなた。申し訳ないという気持ちがあったのね?てっきり私をイライラさせる為にわざとのろのろ仕事してるのだとばっかり思ってたわ」
「申し訳ありません」
「゙申し訳ありません゙しか言えないのかしら?私そういうの嬲り殺したくなるんだけど?あぁ、なんかあなたに報酬あげたくなくなってきたわ……ねぇ、どうしたらいい?」
「申し訳ありません」
ああ、ヤバイ。キレてる。機嫌を悪くした女王様の纏うオーラに絞め殺されそうだ。
汗が滲む額を無視して平静を装う。
「大変申し訳ありません。しかしLv.壹を数人派遣して見当のつく所を捜索しましたが、今生 彩は……【ill will】内には居ないかと…」
「うふふ、やっぱり貴方達みたいなウジ虫Lv.壹じゃ人一人探すのも無理なようね?あ、いいの。謝らないで。だって能無しに頼んだ私が悪いんだもの」
絶えず笑顔で紅い口紅を三日月に歪める女王様―――【ill will】幹部・イリア。
「そうねぇ…ここ以外での心当たりと言えば…」
ここから逃げたいとそれしか考えていなかった俺は不意に視界に黒いフィルターが掛かって、イリアからのプレッシャーよりこれが来た方が緊張して体を強ばらせた。
どんどん遠退いていく今居る空間の感覚に体が揺れるが足を踏ん張る。
黒いフィルターに一本のカラフルな日常風景が走る。
それは、苦しそうな彩の顔と、憎たらしいほど笑う彰の二人が居る一室の風景だった。
そういうことか、彰…。
憎しみを込めて心の中で呟くと、キッとイリアを見据えた。その雰囲気の変わり様にようやくか、とイリアは小さく安堵した。
「やっと"見えた"のね?」
静かに頷くとイリアはしっしっと手を振り行けの合図を送る。
「……【46】に行ってきます」
最後に見えた風景は、彰が彩に馬乗りになっているものだった。
俺は憎しみを圧し殺した。
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