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「……香奈…?」
神田が声を掛けると、中で調理している女が振り返った。
女は一瞬びっくりしたが、すぐにふふっと笑う。
(やっぱり、香奈だったじゃないか…)
「久し振りだね…ユウ」
香奈の手が調理台の上からポケットの中へと動くのが見えた。
すぐさま神田は走り、香奈の手を出すと、やはりその手には蒼剣が握られていた。
「お前、『霧』を使って逃げる気か。
探索班に見つかった時もそうやって逃げてたんだろ?
3年前だって…」
「あはははは…。
…放してくれない?」
「掴んでいれば、『霧』で透明になっても、逃げられないだろ?」
「だから、見なかった事にして…」
「この馬鹿が!!
今まで、オレがどんな気持ちで捜していたか…!」
手を掴んでない方の手で香奈の体を引き寄せ、抱きしめる。
「やっと見つけたんだ、もう放すもんか…」
「ユウ…、私なんかをずっと好きでいてくれたの…?」
「…当たり前だろ!」
ユウがキスしようと迫ってくるのを、また寸前で止める。
「お願い、やめて…。
私なんかと…」
「オレは何も気にしない。
いつまでお預けされてないといけないんだ?」
「そうじゃなくて…。
私なんかに、ユウとキスする資格なんて無い、って意味で言ってるの…。
私、家族を殺すような、そんな人間なの!
教団にだって、どんな顔で帰れば良いのかさえ……まだ分からない…」
「そんな事で今まで姿を消していたのか?」
「"そんな"事!?
私が今まで悩んできた事を"そんな"呼ばわりする!?」
「あぁ、"そんな"事だな。
お前にとっては"そんな"理由が大きかったんだろうが、オレはどっちでも良い。
今お前がいる事が嬉しいし、今のお前が好きなんだ。
そんな過去の事は、どうだっていい!」
再度、香奈の体を神田が強く抱きしめる。
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