3 「あなたのせいで、お母様もお父様も私を愛してはくれないのね!」 「…えっ…」 「牢屋に入れられた人が、こんなに良い環境で暮らせるなんて、聞いたことがないわ!」 「…そうなの…?」 「そうよ! 牢屋って言ってる割には設備も調っているし、玩具も私より数倍揃ってる!」 「………」 「兄様だって、私を無視するときだってあるのよ! 全て、あなたのせいだったの…!!!」 グッと更に手に力を込める奈穂…その時、何かの力が働いてバッと香奈が引き離された。 「例の霊力ね! 私は至上稀に見るくらいに霊力が弱いっていうのに!!」 「ちょ…ちょっと待って…」 香奈が、再度奈穂の目の前に立つ。 「ねぇ、交換条件しない?」 怒りで興奮しながらも、静かに香奈の提案に耳を傾ける奈穂。 「私は、今まで愛情に包まれて生きてきた。 それもうっとうしい位に」 「そんな風に思うなんて、贅沢よ!」 「そうかもしれない…でも、一人で居たくてもそんな願いは叶わないのよ?」 「…………」 「だから、小さい頃から聞いてきたあなたの存在が、とても羨ましかった…。 外で、自然に触れられて、人との接触だって出来るし、何だって自分で思いのまま」 奈穂は、ただただ静かに聞いていた。 「比べる事も出来ないし、しようとも思わなかったけれど、貴方よりも沢山の愛情を貰えるように頑張った! 外にいられるって事は、掛け替えの無いことだと思うの! それを普通に持つ貴方…」 先程の奈穂と同じようにキッと睨む。 「貴方は、絶対に許せなかった!! 正直、憎らしかった!!!」 「…そう…だったの…」 「でも、今日貴方に会って思ったの!」 今度は笑う香奈。 「あぁ、貴方も同じように悲しんでるんだ、って。 人生に不服なんだ、って」 「私みたいに贅沢だ、と思った?」 「それも思ったけど、貴方もでしょ?」 「うん、外なんて、苦しいだけよ…。 愛情が欲しい…!」 「そう! だから、私達、交換して生活してみない?」 これが、香奈の思い付いた交換条件。 2人の利害の一致の瞬間だった。 そして、直ぐさま隼人も乗り気になった。 . [*前へ][次へ#] |