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「あなたのせいで、お母様もお父様も私を愛してはくれないのね!」

「…えっ…」

「牢屋に入れられた人が、こんなに良い環境で暮らせるなんて、聞いたことがないわ!」

「…そうなの…?」

「そうよ!
牢屋って言ってる割には設備も調っているし、玩具も私より数倍揃ってる!」

「………」

「兄様だって、私を無視するときだってあるのよ!
全て、あなたのせいだったの…!!!」

グッと更に手に力を込める奈穂…その時、何かの力が働いてバッと香奈が引き離された。

「例の霊力ね!
私は至上稀に見るくらいに霊力が弱いっていうのに!!」

「ちょ…ちょっと待って…」

香奈が、再度奈穂の目の前に立つ。

「ねぇ、交換条件しない?」

怒りで興奮しながらも、静かに香奈の提案に耳を傾ける奈穂。

「私は、今まで愛情に包まれて生きてきた。
それもうっとうしい位に」

「そんな風に思うなんて、贅沢よ!」

「そうかもしれない…でも、一人で居たくてもそんな願いは叶わないのよ?」

「…………」

「だから、小さい頃から聞いてきたあなたの存在が、とても羨ましかった…。
外で、自然に触れられて、人との接触だって出来るし、何だって自分で思いのまま」

奈穂は、ただただ静かに聞いていた。

「比べる事も出来ないし、しようとも思わなかったけれど、貴方よりも沢山の愛情を貰えるように頑張った!
外にいられるって事は、掛け替えの無いことだと思うの!
それを普通に持つ貴方…」

先程の奈穂と同じようにキッと睨む。

「貴方は、絶対に許せなかった!!
正直、憎らしかった!!!」

「…そう…だったの…」

「でも、今日貴方に会って思ったの!」

今度は笑う香奈。

「あぁ、貴方も同じように悲しんでるんだ、って。
人生に不服なんだ、って」

「私みたいに贅沢だ、と思った?」

「それも思ったけど、貴方もでしょ?」

「うん、外なんて、苦しいだけよ…。
愛情が欲しい…!」

「そう!
だから、私達、交換して生活してみない?」


これが、香奈の思い付いた交換条件。

2人の利害の一致の瞬間だった。

そして、直ぐさま隼人も乗り気になった。



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