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扉の先には、白い石造りの町並みが広がっていた。
伯爵は、こういうのが好きなんだね。

「随分と風景が整ってる。
整いすぎて、気持ち悪いよ」

「そんな事言わないで、綺麗な風景は綺麗だと素直に感動すれば良いの!」

「違うよ、きっと、後ろで千年公が手を回しているんだろう、って事。
そんでもって、綺麗に維持してるんじゃない?」

お兄ちゃんの現実的な意見を余所に、私はその町に素直に感激していた。
風流ある石畳に、オレンジから白の壁。
壁には蔦がはっていて、時代を感じさせる。

「ただ、この町に住むのがアクマじゃなくて人間だという事が、僕は解せない。
千年公の事だから、全員アクマにしてしまっていると思っていた」

「それはきっと、人間にしかこの風景は出来ないのよ」

「………?」

でも、今は早朝なので、人間は一人もいなかった。
朝靄が微かにかかって、辺りは僅かに霞んで見える。
庭に植わっている葉には朝露があり、微かな風でも零れ落ちてしまう。
一部の露は、凍っている。

「…ねぇ…隼人お兄ちゃん」

「どうしたの?」

「…ううん、何でも無い」

朝露があまりにも透き通っていて、私の心など見透かしているよう。
私の心…本当は、まだ揺れているの。

エクソシストやファインダー、化学班の皆と敵対し、いつかは戦う。
そこは別に良い。
ノアのメモリーによって私はイノセンスを毛嫌いしているから。

…でも。
……私が愛した人を、倒せる?
否、殺せる?

…そこが未だ、決心出来ずにいる。



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あきゅろす。
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