4 扉の先には、白い石造りの町並みが広がっていた。 伯爵は、こういうのが好きなんだね。 「随分と風景が整ってる。 整いすぎて、気持ち悪いよ」 「そんな事言わないで、綺麗な風景は綺麗だと素直に感動すれば良いの!」 「違うよ、きっと、後ろで千年公が手を回しているんだろう、って事。 そんでもって、綺麗に維持してるんじゃない?」 お兄ちゃんの現実的な意見を余所に、私はその町に素直に感激していた。 風流ある石畳に、オレンジから白の壁。 壁には蔦がはっていて、時代を感じさせる。 「ただ、この町に住むのがアクマじゃなくて人間だという事が、僕は解せない。 千年公の事だから、全員アクマにしてしまっていると思っていた」 「それはきっと、人間にしかこの風景は出来ないのよ」 「………?」 でも、今は早朝なので、人間は一人もいなかった。 朝靄が微かにかかって、辺りは僅かに霞んで見える。 庭に植わっている葉には朝露があり、微かな風でも零れ落ちてしまう。 一部の露は、凍っている。 「…ねぇ…隼人お兄ちゃん」 「どうしたの?」 「…ううん、何でも無い」 朝露があまりにも透き通っていて、私の心など見透かしているよう。 私の心…本当は、まだ揺れているの。 エクソシストやファインダー、化学班の皆と敵対し、いつかは戦う。 そこは別に良い。 ノアのメモリーによって私はイノセンスを毛嫌いしているから。 …でも。 ……私が愛した人を、倒せる? 否、殺せる? …そこが未だ、決心出来ずにいる。 . [*前へ][次へ#] |