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橙ネコと氷雪の隊長

 数分もしない内に、それらはやってきた。

「シロちゃん、入るよ〜。」
「失礼します。」
「日番谷隊長大丈夫っすか?」
「こら、恋次、しっかりと挨拶をせねばならぬだろうがっ!」

 桃と彼女の同期である吉良、恋次、ルキアが入ってくる。

「あら、雛森たちじゃない。」
「こんにちは乱菊さん。」
「ん?ああ、チビたちも来てたのか。」
「恋次、あんた相変わらず、口も悪いし、頭も悪いんだな。」
「何だとっ!」
「夏梨ちゃん、本当の事言っちゃ悪いよ。」
「……。」

 遊子の言葉に恋次は撃沈し、そして、それをルキアが遠慮なく笑っている。
 そして、桃は部屋の中にあるオレンジの髪を見つけ、思わず声を上げる。

「あっ!貴女は。」

 一護は桃に引きつったような笑みを浮かべる。

「おい、雛森、あいつ誰だ?」
「見かけない顔だね。」

 桃は恋次と吉良の言葉を無視して、一護に近寄った。

「先日はありがとうございました。お怪我は大丈夫ですか?」
「平気だ。……雛森副隊長、あまり眠れていないのでしょうか?目に隈が。」
「あははは。ばれちゃった?うん…最近眠れないの。」
「……。」

 一護は悲しげに眉を下げ、そして、桃の頭を撫でる。

「…………泣きたいのなら、泣けばいいんですよ?貴女は確かに一隊の副隊長ですが…。同時に雛森桃さんなのですから。」
「……ありがとう、でも、泣かないよ。何も終わっていないんだもの。」
「そうですか。」
「そういえば、貴女の名前を聞いていなかったね、教えてくれるかな?」

 桃の言葉に一護は顔を顰めた。

「どうしたの?」
「いえ、予測していたとはいえ、やはり、このような場面は無かったらよかったな、と思っただけです。」

 一護の言いたい意味は多分最初にこの部屋に来た面々しか分からないだろう。

「わたしは……いえ、オレは一護だ。」
「……あれ?シロちゃんが飼っている、猫も一護だよね?」

 桃は冬獅郎の顔を見た。

「こいつは飼っているんじゃない、一護は家族だ。」
「日番谷隊長、ここには一護…いえ、貴女ではなく猫の方です。…がいないのですが、「あいつ」、ではなく、「こいつ」なのですか?」

 四人の疑問を代表して、吉良が冬獅郎に問いかけた。

「……お前たちは四楓院が猫の姿に転じられるのは知っているか?」
「ええ、知っております。それと何か繋がりがあるのですか?」
「一護。」
「はい。」

 冬獅郎の言葉に一護は頷き、皆が自分を見ているか確認してから猫の姿に戻った。

「「「「――っ!」」」」

 四人はこれ以上ないって程目を見開き、一護は苦笑する。

「ごめんなさい。オレが猫の姿や人間の姿になれると知ったら、多分大騒ぎになると思って黙っていたんだ。」
「まあ、確かにそうかもしれないけど…。」
「一体どんな仕掛けがあるんだ?」

 恋次は取り敢えず、一護を持ち上げようと手を伸ばした瞬間、彼の首筋に氷輪丸の切っ先が突きつけられた。

「阿散井、その汚い手で一護に触れるな。」
「はっ、はいっ!」

 冷や汗を流しながら恋次が後退し、それを見ていたルキアが馬鹿にしたように鼻で笑った。

「学習能力の無い奴だ。」
「本当だよ、でも、シロちゃんって結構淡白だと思ったけど、嫉妬深いんだね。」
「うるせぇ。」

 仏頂面の冬獅郎に一護は苦笑を浮かべながら冬獅郎によりそう。

「冬獅郎、ここまでばれたんだ、隊長格の皆にはオレの正体を話した方がいいと思うんだ。」
「だが……。」
「藍染の反乱の所為で護廷は荒れている。一人でも多く実力のある奴が居た方がいいだろう、それに、オレは藍染に面がわれているし、下手にばれるよりいいと思うんだ。」
「……。」

 冬獅郎は、本当は一護を皆に見せたくはなかったが、それでも状況はそれを許してくれなかった。

「分かった。」
「ありがとう、冬獅郎。」
「うむ、その席にはわしも同行させてもらおう。」
「いいのか?夜一さん。」
「ああ、お主に人型を取れるように仕向けたのはわしだしの。」

 夜一の言葉に一護は顔を綻ばせる。

「まさか、夜一さんがここにいるなんて全然知らなかった。」
「わしはお主が本当に想い人に会えるとは思ってもみなかった。」
「……。」

 夜一の言葉に一護は顔を顰めた。

「何だよ、夜一さん。夜一さんが冬獅郎に会いたいなら、こうすればいいと言ったんじゃないかよ。」
「言ったが、実際やりおるとは思っておらんかった。」
「……。」

 一護は夜一の言葉に呆れる。

「この尸魂界は広い、探し相手を見つけるのは一生を懸けても難しい事じゃ。」
「……。」

 一護は確かにこの尸魂界は広い事を知っている。確かに冬獅郎を探すのは実際困難だっただろうが、幸いが続き、彼女は冬獅郎と再会できたのだ。

「……夜一さん、ありがとう。」

 静かに礼を言う一護に夜一と冬獅郎は首を傾げる。

「夜一さんがオレに色々と教えてくれたから、オレはこうして冬獅郎の側に居られる、彼の役に立てるんだ。」
「……それはお主の努力の賜物じゃ。」

 夜一はそっと一護に近づき、そして、彼女の背中をバシリと叩く。

「辛気臭い話はここまでじゃ、さて、早速行くとするかの。」
「待て。」
「なんじゃ、善は急げと言うじゃろうに。」
「急がば回れ、という諺もある。」

 冬獅郎の一言に夜一は眉を寄せる。

「なんじゃ、お主はわしの邪魔をしたいのか?」
「違うが、明日隊主会があるから、との時にでも話せばいいだろう。その時副隊長の面々も集めれば手間が省けるからな、松本。」
「はーい、他の副隊長には集まるように言ってきます。」
「あ、乱菊さんわたしも行きます。」

 冬獅郎の言いたい事が分かる乱菊が病室から出ようとすると桃も名乗り出る。

「じゃ、隊長、一護に変な事をしないでくださいよ。」
「じゃあね、シロちゃん。」
「誰がするか、というか、雛森俺は日番谷隊長だっ!」

 逃げるように去る乱菊と桃に冬獅郎はイラつく。

「落ち着けよ。」
「……。」
「あの二人はいつもの事だし、そんなカッカしてると血圧上がるぞ。」
「分かってはいるが、あの二人は何とかならないものか……。」

 乱菊と桃の性格を知っているものは確実に何ともならない事を知っているので黙りこむ事しか出来なかった。

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あきゅろす。
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