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橙ネコと氷雪の隊長

「冬獅郎体大丈夫か?」
「ああ。お前のお陰だ……お前こそ平気か?」

 一護は猫の姿で項垂れた。

「ああ、傷跡も残らなかったよ。」
「…それは良かった。」

 冬獅郎は心の底から安堵したような声音を出した。

「なぁ、冬獅郎。」
「何だ?」
「これから…どうなるんだろうな…。」
「……。」

 冬獅郎は一護の言葉で、今後の護廷を考える。三人の隊長が抜けた穴埋めに誰かがすぐに入るとはまずありえない、つまり、その間のしわ寄せが他の隊に降りかかってくる。
 十番隊は書類の捌く速さは護低の中でも上位で、そして、戦闘もそこそこなので間違いなくこのしわ寄せは大きいだろう。

「オレ…山本の爺さんに言ってまた仕事させてもらえるように頼もうか?」
「いや、そうすればお前が怪しまれるだろう。」
「だけど……。」

 山本はネコの一護が人間になれるとは知らないのだ、それなのに、死神でもない彼女が出入りするのは今はいらぬ争いを避けるためにも止めた方がいいだろう。

「……。」
「お前は心配するな、いざと言う時は松本も働くだろう。」
「乱菊さんが優秀なのは知っているけど…、それでも、冬獅郎の負担は少なくないだろう?」
「……お前が美味しいものを作ってくれるなら、早く元気になるさ。」
「……。」

 冬獅郎の優しい言葉に一護は黙り込み、頷く。

「うん、冬獅郎が退院したら、美味しい料理作るからな。」
「期待している。」
「ああ、どんなんが食べたい?」
「そうだな、卵焼きかな。」

 冬獅郎の答えに一護はクスクスと笑う。

「ああ、大根おろしもつけておくな。」
「さすが一護、俺の好みを熟知しているな。」
「当たり前だろう、一緒に暮らして何年経つと思うんだよ。」
「そうだな。」

 冬獅郎は手を伸ばして一護の頭を撫でる。

「一護、お前がここに居てくれて本当に良かった。」
「……冬獅郎?」

 あまりにも小さい声に、一護は不思議そうな顔をして冬獅郎を見上げる。

「お前がここに居なければ、きっと、雛森は重症を負っていただろうし、それに、俺だって自分の不甲斐なさで我武者羅に傷も癒えていないうちから修行をやっていただろう。」
「……。」
「お前が居たから雛森は無事だったし、俺は必要以上に自分を責めなかった。だから、一護…ありがとう。」
「……。」

 冬獅郎の言葉に一護は冬獅郎の指を軽く噛んだ。

「一護?」

 小さな痛みが走り、冬獅郎は顔を顰めた。

「冬獅郎、オレがお前の側に居るのはオレが決めたから、ありもしない仮説を言っても現にオレはここにいて、お前と話している。それだけだ。」
「…ああ、そうだな。」

 冬獅郎は目を細め、一護の頭を再び撫でる。
 一護は満足そうに微笑み、自ら冬獅郎の手に擦り寄った。

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