セブンス・リート
9
戸惑うように手がジョイスに伸ばされて、
「ア、アーク?」
ジョイスの手首をガシリと強く握った。そのままジョイスの体を自分の方へ引き寄せる。
「な、ななななにすんだよ! 痛いって!」
わけがわからずアークを見たジョイスは、いつもは穏やかな少年の様子がおかしいことに気がついた。
目の焦点が定まっていない。
おまけに、さして暑くもないこの季節だというのに、額から汗が噴き出ている。熱でもあるのかと疑いたくなるような様子だった。
ジョイスが息をつめて見守る中で、アークが震える唇を無理やりこじあけた。
「おぉふくろぉぉおお――――――っ!!!」
「は?」
アークの口から飛び出したその言葉をジョイスが理解するのに、数秒。
「ああ!『おふくろ』ね。サリアが何か用?」
そう言ったときにはジョイスの体は宙を舞っていた。
今まで話をしていた部屋を出て、猛烈なスピードで階段を駆け下りる。
足元で乱暴に踏まれた床がギイギイと身をよじる音がした。
目の端にアークの青い髪が見えたような気もした。
だが、全てが一瞬のことで思考が追いつかない。
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