セブンス・リート
7
「確かにな。…でも新しいのには絶対買い替えない」
ジョイスがミュージコードの大きな丸いボタンを押すと、ジョイスの歌声が4つに開けられた穴――スピーカーから流れてきた。ただし、アークが聞いたときよりも大分音質が劣っている。
歌が小さくなったかと思えば急に大きくなったり、フレーズの間に雑音が入って歌が途切れたり。
その度にジョイスはミュージコードの角をコンコン叩いたり、振り回したりして首をひねっていた。
「バカ、そんな状態じゃ直すよりも新しく買った方がよっぽど安上がり――」
言いかけて、アークは口をつぐんだ。
ミュージコードを見るジョイスの目がひどく真剣で、その上優しかったからだ。
(……あぁ)
そして、思い出す。
(確か、あいつのミュージコードは――)
10歳の誕生日。いないはずの両親からの誕生日プレゼント。
当時はまだ珍しかったミュージコードを小さな手の平に握りしめて、アークの隣で目をまん丸に見開いていたあいつ。
(生まれて初めての誕生日プレゼントだもんな)
ジョイスの両親はジョイスが生まれて間もなく他界している。乳飲み子のジョイスは、母親の友人であったアークの家族のもとに身を寄せた。
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