闇夜に浮かぶ桜吹雪
出会い
くっそ!いやがらねぇ。
さっさと探さねぇと面倒なのによ!
肌に突き刺さる冷気に身体を震わせ目的の人物を探すために暗闇に目を凝らす。
ゾフェル氷刃海の寒さよりは遥かにマシだが、山に囲まれた土地特有の気候に手が悴んでしまっていた。
「こんなときラピードがいりゃあ一発なんだがな」
いない相棒を求めても仕方ないと自分の勘を頼りに細い道に足を踏み入れる。
月明かりだけが頼りなのは心許ないが、目が慣れているため問題なかった。
「…………臭うな」
微かに漂う血の臭いを頼りに歩みを進めると鈍い光が目の端に映る。
振り上げられた刀の先には怯えた顔の少女が蹲り、恐怖を露に目を見開いていた。
「はっ!いやがったな!」
ユーリは不敵に笑うと愛刀の鞘を投げ飛ばし駆け出すと振り下ろされた刀を受け止める。
拮抗している力を往なし、相手の力を利用し刀を滑らせると体勢を崩した男の脇腹に蹴りを入れた。
「ったくゾンビみたいに復活しやがって」
毒づきながら立ち上がろうとした男の心臓を突く。
男は数回痙攣を起こし力なく崩れ落ちた。
「きゃあっ!」
「ちっ!蒼破!」
後方からの悲鳴に衝撃破を打つ。
ユーリの攻撃に右足を負傷した二人目の男は何事もなかったかのように立ち上がり、ニタリと笑う。
不自然すぎる回復力に動じることなく、ユーリは目を細めると走り寄り敵を斬り上げ空中で追撃をする。
振り落とされた男はぐったりとしていたがそれ以降動かなくなった。
最後に残っていた一人も胴を薙ぎ払い死んだことを確認すると、彼は冷めた目で男達を一瞥し震えている少女に手を差し伸べた。
「もうあんたを狙っているヤツはいなくなったぜ。安心しな」
「あ、あぁ……」
「おいっ!」
少女は焦点の合わない目をユーリに向け、言葉にならない声を上げると崩れ落ちてしまった。
とっさに少女の身体を受け止め、彼女の顔を見る。
青白い顔色にユーリは眉をよせ、深々とため息を吐き出した。
「……やっぱりオレ、憑いてんのかもな」
思わずぼやく。
世界を巻き込んだ騒動の中心にいたことを忘れているような発言に、彼の仲間がいたらツッコミをいれていただろう。
ユーリは細身の体躯に似合わず軽々と少女を抱き上げると、前方からやって来た『ここの仲間』に肩を竦め血生臭いその場から歩き出した。
20110909
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