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GEASS
世界と宇宙の綻びの真ん中で






長い気絶から目を覚ました時、綺麗なカフェはもうその原形を止めてはいなかった。
椅子もテーブルも散乱し、土埃が舞いすぎて視界もはっきりりしない。
どうやら僕は先程の爆風で、壁に飛ばされ頭を強打したようだ。後頭部が痛い。

「あっ、ルルーシュ!!!???」

思い出した。一緒にいたはずの彼は何処だ!?
周りを見渡すが、彼の姿はなく声もしなかった。

「ルルーシュ!!!!ルルーシュ!!!!」

僕は死に物狂いで彼の名を呼んだ。
どうか、どうか……生きていて。






空気中に漂う細かい灰が、気管支に入ったようで苦しい。
咳き込みながら、俺はゆっくり立ち上がった。
手と足をゆっくり動かし、状態を確認する。運良く何処も負傷していなかった。
しかし、ここは何処だ?
先程までいた店の中ではない。恐らく俺は外に吹き飛ばされたようだ。
では、枢木は?
まさか瓦礫で埋まった、店内に………

「おい!!枢木!!枢木!!聞こえないか!?」

とりあえず近くのコンクリートを叩いて怒鳴るも、何も変化はない。
携帯は鞄の中だ。
クソッ!!救助隊は何処だ………?
俺はその場から急いで走り去った。






『みなさん、ご無事ですか?』

店内で怪我人の応急処置をしていると、急に明るい光が差し込んできた。

「……ランスロット?……じゃない。セシルさんっ!!」

光の先には大きな白い騎士、ランスロットの姿。
パイロットは、声からして僕の代わりにセシルさんが務めてくれているようだ。

『あっ、スザクくん!!』

出口を作り、残された人々を脱出させるとセシルさんがコックピットから降りてきた。

「ルルーシュ殿下は何処?」

「ルルーシュ殿下に会いましたか?」

二人の声が重なった。

「一緒じゃあ……ないのね、その様子だと」

セシルさんが肩を落とす。

「私たち、殿下の携帯電話の機能を頼りにここまで来たんだけど………」

後ろを振り返る。彼はきっと鞄に携帯電話を入れっ放しにしていたのだ。

「今すぐ探しに行きます。多分爆風で外に飛ばされただけで、モール内にいるとは思うんです」

僕はセシルさんからキーを受け取った。
彼の無事を確認しなければ、何をしてでも。

「お願いするわ。ここにいる人たちは安全な場所まで私たちが誘導するから。ただ、犯人たちは騒ぎを起こすだけ起こして逃げた可能性が高いの。残党は残ってるかもしれないけど、今は殿下の身の安全を確保することを最優先して」

「イエス・マイ・ロード」

コックピットに急いで飛び乗る。
ルルーシュ。ルルーシュ。ルルーシュ。






「おい、聞こえないのか!?おい!!」

テロリストらしき声が聞こえ、急いで花壇の影に身を隠す。随分と焦っている。
意外と軍が動くのは早かったようだな。

「一体何の為にナイトメアまで盗んだと思ってるんだ!!??おい!返事をしろ!たった一機なんだろう!?」

ナイトメアを盗んだ……?
なるほど。だからこれだけめちゃくちゃに破壊出来るという訳か。
だが一機でそこまでの戦闘力……もしかしたら枢木がランスロットで前線に加わったのかもしれない。
思わず胸を撫で下ろす。
それも束の間、そのテロリストの足音が近づいて来た。

「……何だってんだよ、クソッ!!」

その時、視界の横で何かが動く気配がした。
そっと横を向くと、隣の花壇の近くにあった女の死体が動いている。
テロリストはそれには気付いていないようだ。
俺がそれを凝視していると、その女の死体の下から、小さな女の子が現れた。
あっ………そうか。母親が自分の身を挺して子供を護っていたんだ。

「………ママ?」

もう動かないその死体に、女の子は語りかける。
栗色の髪の女の子だった。
訪れる既視感。

「ねぇ、どうしたの?ママ」

何度も何度も、女の子は尋ねる。
ダメだ。それ以上は―――

「誰だ!?そこに誰かいんのか!!??」

テロリストが彼女の声に気付いてしまった。
銃口が花壇の奥の小さな頭を捉える。
少女はその怒声に一瞬肩を震わせたが、涙を零しながら母親を懸命に揺り動かした。

「、ママーーーーー!!!!!!」

飛び出した俺の身体。
泣き叫ぶ少女の声。
放たれた銃弾。






乾いたピストル音が一発。遅れてもう一発。
僕は嫌な予感がして、音のした方へランスロットを急発進させた。
画面を拡大すると、銃を構えたテロリストが映った。

『銃を置いて投降して下さい。自分は、武器を持たない者には………』

スピーカーからそう流す。
テロリストの顔が引き攣るのが分かった。きっと僕がナイトメアを全て破壊した情報を既に得ているのだろう。
その時、カメラがまた別の人物を捉えた。
血溜まりに横たわる、黒髪の人物。

『ル……ルーシュ?』

自分の中で何かが切れる感覚がした。

『うわぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

スピーカーから出る絶叫が木霊する。
逃げようとするテロリストを、撃っていた。
コックピットから周りを何の確認もせず降り、彼の元へと駆け寄った。

「ルルーシュ!!??ルルーシュ!!??」

うつ伏せに倒れている彼を抱き起こし、狂ったように彼を呼んだ。

「………く、る、る……ぎ?」

いつにもまして青白い顔。
僕は頭がパニックになって、ただ、ただ―――

「ルルーシュ!!??ルルーシュ!!??」

涙も流さず、ただ流れ出る血への恐怖に、叫び続けた。






Title by "9円ラフォーレ"

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