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03


「惚れた?」
「は?」
「藍施さん」
「ああー……癒される人だったね」

藍施さんと別れてから、理事長室まで歩いる最中、俊樹がいきなりそんな事を言ってきた。
てゆーかなんでそんな不機嫌なの?

「そんな事聞いてるんじゃなくて!!」
「もー。なに怒ってんの、お前」
「怒ってない!!」

全く、なんなのこの子。
面倒くさい子だね。

「はいはい。惚れてません」
「本当に?」
「あのね、確かに俺はバイだけど、基本女の子が好きだからね」
「知ってるよ!! バカ桃汰!!」

なんでバカ?
この子ちょっとカルシウム足りてないー。

「じゃあ、藍施さんと僕どっちが好き?」

あ、話まだ続いてるの。

「どっちって、お前ねぇー」
「どっち!?」
「藍施さんも俊樹も好きだよ」

溜め息吐きながら俊樹の頭を撫でてやったら、その手を思っきり叩き落とされた。痛いでしょーが。

「もー。何がそんなに気にくわないの」
「僕の方が付き合い長いのに」
「好き嫌いに長いとか短いとかは関係ないでしょ」

何言ってるのさ。そう言えば、俊樹は口をへの字にしてデッカい瞳に涙を溜めた。

「なんで泣くのー」
「桃汰の所為だもん」
「なんでー?」
「うっさいバカ!!」

やれやれ。姫さんご機嫌斜めになっちゃいましたよ。

「はいはい。俺が悪かったです。ごめんね?」
「……やだ」
「泣かないでよー。ね?」

よいしょ、とかオッサンクサイ掛け声かけて俊樹を小さい子を抱っこするみたいに持ち上げる。

「ほら、理事長室着くよ?
泣いてたら恥ずかしいよー?」
「……うん」

よしよし、と頭を撫でてやれば俊樹は小さく頷いた。
俊樹、俺と同い年だよね?
甘えたな所は全然成長しないんだからー。

「失礼します」

泣き止んだ俊樹を下に降ろし、一目見て金かけてんなぁーと分かるドデカい扉を二、三度ノックしてから中へ入ると、やはりというか室内も相当金をかけた造りをしていた。






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