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闇夜の国 5
   ※


 ――シイナって男子に人気あるわけ。


 ミチコはタカシにそう切り出した。


 ――だけど、あんたがいつもシイナの側にいるから、手出し出来ないのよ。


 ミチコの横にはヒサヨも立ち、ふたりでタカシを睨んだ。

 何の反応もないタカシに、ふたりは苛ついているようだった。

 タカシには、ふたりが何故そんなことを言い出すのか、分からなかったのだ。


 ――あんたのせいで……。


 ミチコが言ったその言葉に、タカシの頬はわずかに痙攣した。

 その言葉は嫌いだった。


 ――シイナは優しいから言わないだろうけど、迷惑だと思ってるに決まってるじゃない?


 タカシはゆっくりと視線だけをミチコに向けた。

 目が合った瞬間、ミチコは意地悪そうに笑った。


 ――ねえ、わかる? 邪魔なの、あんた。



「気がつかなかったよ。ごめん……」


 僕は、自宅のマンションから近い公園のベンチに腰掛け、夕暮れの空を雲が流れて行くのをぼんやりと眺めていた。

 僕の目の前では幼い子供達が遊んでいたけれど、遠くで母親に呼ばれて駆け出していった。もう家に帰る時間なのだろう。


 その時の僕は、昔読んだ「星の王子さま」の一節を思い出していた。

 この絵本は、とても悲しい気持ちになった。

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