闇夜の国 5 ※ ――シイナって男子に人気あるわけ。 ミチコはタカシにそう切り出した。 ――だけど、あんたがいつもシイナの側にいるから、手出し出来ないのよ。 ミチコの横にはヒサヨも立ち、ふたりでタカシを睨んだ。 何の反応もないタカシに、ふたりは苛ついているようだった。 タカシには、ふたりが何故そんなことを言い出すのか、分からなかったのだ。 ――あんたのせいで……。 ミチコが言ったその言葉に、タカシの頬はわずかに痙攣した。 その言葉は嫌いだった。 ――シイナは優しいから言わないだろうけど、迷惑だと思ってるに決まってるじゃない? タカシはゆっくりと視線だけをミチコに向けた。 目が合った瞬間、ミチコは意地悪そうに笑った。 ――ねえ、わかる? 邪魔なの、あんた。 「気がつかなかったよ。ごめん……」 僕は、自宅のマンションから近い公園のベンチに腰掛け、夕暮れの空を雲が流れて行くのをぼんやりと眺めていた。 僕の目の前では幼い子供達が遊んでいたけれど、遠くで母親に呼ばれて駆け出していった。もう家に帰る時間なのだろう。 その時の僕は、昔読んだ「星の王子さま」の一節を思い出していた。 この絵本は、とても悲しい気持ちになった。 [*prev][next#] [戻る] |