闇夜の国 13 ※ 「い、いたた……」 シイナは、気がついた途端に身体に激痛が走った。 ゆっくりと目を開けると、東京の夜には珍しく、満天の星空が目に入ってきた。 ぶるるっと震える。身体が冷え切っているのだ。 いつからこうしていたのだろう……。 そこで、ふと気がついた。 「タカシくん!」 シイナの足下には、重なるようにタカシが倒れていた。 「タカシくん、大丈夫? タカシくん……」 シイナはタカシを揺さぶってみたが、返事が無かった。 それどころか、タカシの身体はやけに冷たかった。 シイナは手を止めた。 ただ、目を閉じているようにしか見えない。 すう、と自分から血の気が引くのを、シイナは感じた。 タカシの頬に、シイナはそっと触れた。 その指が震えた。 「やだ……ちょっとタカシくん、何やってるのよ……ねえ」 シイナは声までを震わせて呟いた。タカシは何も応えなかった。 体中から力が抜けた。 こんなに好きだったのに。 こんなに大切に思っていたのに。 「わたし……あなたの何だったの……?」 シイナの声は、あまりにもか細くて、側をすり抜けた冷たい風にさらわれた。 心までが冷えてしまったのに、シイナの瞳からは熱いものがこぼれる。 シイナは、両手で顔を覆い、すすり泣いた。 それを、ふたりを照らす背後の街灯の上から見ていた彼は、安心したような笑みを浮かべると、クリップボードに挟んであった紙を引っ張り、4つ折りにして胸ポケットにしまった。 [*prev][next#] [戻る] |