闇夜の国 12
彼は、僕に軽く頭を下げ、
「それでは」
と、去ろうとした。
「ちょっ……」
僕が手を伸ばして、そちらに一歩踏み出すと、足下が無くなった。
何故か僕の身体は、五階建ての建物の、手すりの外にあった。
――来世での出会いを誓って共に命を……。
僕の視界にはシイナがいた。
僕たちは急速に近づいていた。
どうしてシイナがここにいるのか、僕には分からなかった。
そんなことを知る余裕もなかった。
シイナは上を向いた。そして、僕に気がついた。
こんなのは嫌だ。
これだけは駄目だ!
僕は、シイナだけは傷つけたくなかった。
僕は心の中で叫んだ。
そして、突然思い出したんだ。
――星がキレイなのは……
闇の中で輝いているからだって。
そう言っていたんだ、シイナ。
そして、僕は落ちた。
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