『発展途上』早川失言編4 俺は、《カブキ》の連中の根城に乗り込み、そこで沢木の顔を見つけた。 ヤツは俺に掴みかかろうとしたが、俺の表情に気がついたのか、その手を下ろす。 そして、表情を歪めながらも奥の小部屋に招き入れて、二人で話をする時間をくれた。 「……こんなとこまでなんの用だヨ?」 「ルネが、トールに目をつけた」 「――ハァッ?」 俺の言葉に沢木が目をひんむいて仰天した。 「チームの中に、俺がトールに殴られたのを見てたヤツがいたらしくてよ……」 「え、お前。トールちゃんにボコられたの? だっせぇ」 「うっせ! じゃあ逆に聞くけどよ、お前、トール殴れるか?! あんなに可愛いんだぞ? 無理だろ? 俺は無理だ! 応戦なんぞできっか、アホ」 「うわ、開き直った。……うん、まぁ、確かにそれは無理かもだけど」 沢木がクックッと笑った。 「義家も実物見たら萎えんじゃねーの?」 「そんなの関係ねーよ、ルネは……。一度コレという獲物を見つけたら、たとえそれがウサギだろうがスズメだろうが全力で狩る男だ」 「はぁー……タチ悪っ」 「そういうワケだから、しばらくトールが一人にならねーように気を配ってやってくれ。俺は……多分、ついててやれねーから」 「ったく。……わーったよ」 もう用は済んだとばかりに、沢木がシッシッと俺を追いやった。 そして、《カブキ》の連中のギラつく視線を無視しながら表に出て、しばし歩を進めたところで。 ルネが俺の前に立ちはだかった。 「俺の言いてぇことはわかってんだろうな、リョー?」 ルネは笑っている。 だけど、その中に渦巻いているのは、怒りと、絶望。 こいつは、自分のモノに対する執着が強い。人に対しても。 そして、裏切りは決して許さない。 馬鹿だな、ルネ。 今さらお前を裏切るくれーなら、とっくに友達やめてるっつの。 てめぇのねじれた性格、一番熟知してんのは俺だって自負してんだからな。 さて……何発で許してもらえっかな。 明日の我が身は病院のベッドの上だと覚悟した。 *** 柄でもない恋と、ねじれた友情。 (2011.11.18拍手) [*prev] [戻る] |