『発展途上』早川失言編2
別れた後も、ふとした瞬間に顔が浮かんでいた。
何なんだろう、この気持ちは。自分でも理解できない疼きに、それからしばらくはいつも以上に苛々していたと思う。
歩いている時にぶつかってくるようなヤツがいれば、モヤモヤを吹き飛ばすべく睨みつけて、喧嘩を買われたら気が済むまでぶん殴ったりして。
そんな中の一人に横から口を出したヤツがいた。苛々しながら睨みつけてみれば……あの子だった。
運命の再会がコレじゃ、あんまりだ。
それより何よりも驚いたのは、あの子が……あの子が……ハチコーの学ランを着ていたことだった。
はあ?! お、男ッ?!
アリエナイだろ?!
あっけに取られているうちに、あの子は俺の前から逃げ出した。
――前に見た時はおっとりした印象だったのに、めちゃめちゃ足が速えぇ!!
体力はあり余ってると過信していた俺が、あんなヒィヒィ音を上げる羽目になるとは……。やっぱ、煙草か。煙草はやめるべきなのか?
それでも、走っているうちに俺のことを思い出してくれたのか、あの子は立ち止まってくれた。
も、もしかして、男装の美少女とか?
そんな漫画みたいな設定だったりして。そうなんだな、そうなんだろう!
俺は感極まって、開口一番、問いただした。
「――キミ、女の子だよね?」
その直後に走った激痛……。
……今の今まで信じたくはなかったが……やはりアレも恐らく痛烈なパンチだったのだろう。
後日、もしかして他人の空似かもしれない、と確かめてみれば、俺が助けたあの日のことをしっかり知っていて。
……それから。
自分でも何だかわからない苛立ちを解消しようと、適当な女をひっかけたりもした。でも、あの子の顔がどうしてもちらついて……。
まさか不能になっちまったかと俺は大いに焦り、脳内のイマジネーションを総動員させる。即座にあの子の顔がポンッと浮かんで慌てる。
いやっ待て待て俺っ、アレは男。男だっ!
脳内イメージを修正する。胸はペタンコだ。俺と同じものをお持ちだ!
――そんな想像を繰り返した結果。
俺は開けなくてもいい扉を開けてしまっていた。
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