同じ道、同じ言葉 22
俺たちは未だにコスプレ姿のままだ。
実はこの後、小山内の家で打ち上げをする予定なのだが、用事があって来られなかった小山内の妹に熱望されて、このままの姿で行くことになっている。
瀬名はスーツ姿で決まっているからまだいいが、俺はこんな姿でダンスなどと注目を浴びるのは嫌だ。しかも、この靴は少しヒールがあって動きにくい。
俺がため息をついていると、瀬名がグイッと手を引っ張り、ムリヤリ俺を振り回して踊り始めた。流れているのも軽音部のロックだし、フォークダンスとはとてもいえないくらい無茶苦茶だ。
「や、や、やめろ、瀬名君……」
「セバスチャン、パス!」
ぼーっと突っ立ってこちらを見ていた皆慈に向けて、瀬名は俺を放り投げた。
「は? 俺、踊れねーよ!」
「別にいーじゃないすかー。ギュッて抱きしめて、何となくこう、腰振ってれば」
「振るな!」
「仕方ない、僕が踊り方を教えてやるよ」
小山内が瀬名の手を取って、ハイヒールを履いているにもかかわらず、華麗にステップを踏み始めた。さすが、オールマイティ小山内。何でもそつなくこなす男。
別に踊りたいわけではないのだが、せっかく教えてくれるのを無碍に断るのも悪くて、真似をしてたどたどしく足を運んだ。皆慈も舌打ちしながらもつき合っている。
「……ん?」
ふと外野を見ると、俺たちのすぐ横に男子が二列に並んでいた。
「つ、次よろしいですかっ?!」
拳を握りしめた男がそんなことを口走った。その横にいた男は、「俺は婦警さんで!」とのたまった。
ふむ。この学校の生徒はほとんどが不良だと思っていたが、どうやら少々認識を改めた方が良さそうだ。小山内は袖をめくり、腕時計をちらりと見た。
「そろそろうちの親が車で迎えにくるはずだけど、どうする? 踊る?」
「御免こうむる」
「だよね〜。瀬名」
「アイアイサー!」
瀬名がハイヒールの小山内を担ぎ上げて、脱兎のごとく逃げ出した。さすが俊足の瀬名。速い。
唖然としながらその姿を見送っていたが、我に返った皆慈も俺をヒョイと抱えて走り出したのだった。
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