違う過去 12
そのメールを見て俺は、はぁ、とため息をついた。
「……世間は狭いな」
「?」
「飛ぶ鳥と書いて、アスカって読むのだ。飛鳥君は、西山君と同じ学校らしい。そして、林って人とも知り合いらしい」
「……??」
「飛鳥君は、この間俺に絡んできてたヘアバンドの茶髪。林は、俺にナイフを突きつけてきた男。どっちも気を失うまでやっつけただろう、キミが」
「あー」
思い出した芹沢は、眉間にシワが寄った。
「……まいったな。明日から、がっつりバイトの予定入れちまった」
「コンビニか?」
「いや、コンビニは深夜だけ。色々あって週に二十時間以上入れられねーの。だから、別件を昼間と夜にも入れたんだ」
「え……。そんなことして身体もつのか?」
「もたせる。金がいるんだよ」
「もしかして、ご両親に何かあったのか?」
「……」
芹沢の表情が不意に歪んだ。
「わ、悪かった。詮索するつもりではなかったのだが」
「違う。お前のせいじゃない……」
「だが」
「……俺、このままだと進級できねーかもしんねぇ」
俺の言葉を遮って、芹沢がぽつりと言った。
「え? どういうことだ?」
「うちの親、色々と経費滞納しやがって」
芹沢は、深くため息をついた。
「俺に払う金が惜しいんだってよ」
そう言って芹沢は力無く笑った。
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