違う過去 10
その後、父と姉貴も駆けつけたので、場所を自宅に変えて事情を話すこととなった。
小山内は自転車通学のため真っ暗になる前に帰宅することになったが、何故かほんの一瞬の邂逅で姉貴と意気投合し、メル友となっていた。
……通じてはいけないラインが通じてしまった気がする。
母の淹れた紅茶でひと心地ついたところで、親父に促され、今日あった出来事を話した。
「ああ、あの飛鳥君ね……」
話を聞くうち、小学時代に何度か虐めの現場を目撃した姉貴が頷いた。
「その頃の担任には相談しなかったのか」
担任が心を痛めた様子で尋ねた。
「小学校の頃は本を破られる程度だったし、中学ではさほど頻繁ではなかったので」
俺がそう言うと、担任は苦笑した。
「さらっと言うなぁ。お前より芹沢の方がキレそうで怖いぞ」
横に座っていた芹沢を見ると、腕を組んで凶悪な表情になっていた。
「……正直なところを言えば、飛鳥君と仲直り出来ればいいと思っていた」
俺がそう言うと、芹沢が「無理だろ」と断言し、俺は困ったように笑った。
「キミと友達になれたからかもしれない。今日になって初めて気がついたわけだが、飛鳥君に抱いていた気持ちは、友達という存在に対する憧れだったと思う」
「……」
「キミが俺の代わりに怒ってくれたから、俺はそれだけでもう十分だ」
「……そうか」
芹沢の腕から、ふっと力が抜けた。
「もし、他にも困ったコトがあるなら遠慮無く言えよ?」
芹沢がふんぞり返ってそんなことを言うので、俺も少し意地悪を言った。
「キミも困ってることがあるんだろう?」
俺の言葉に、芹沢は急に黙り込んだ。
「冗談だ。キミが言えるようになるまで待つから気にするな」
「……ワリィ」
「例えどんな秘密があろうと、例え言葉が足らなくとも友達だ。そうだろ?」
「……ああ!」
俺たちはガツンと拳を合わせた。
久々に芹沢が馬鹿みたいに笑ったので、俺は嬉しくなった。
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