[携帯モード] [URL送信]
同じ家 15
「ママねぇ、このシーンの写真が撮りたいんだけど」

「あー、いいわねぇ!」

 姉貴と母が相談している間、芹沢がちらりと俺を横目で見た。

「うん、まぁ、その……似合ってるな」

「頼むから褒めてくれるな」

「……だよな」

 そんなことを話していると、母たちの話もまとまったようだ。

「協議の結果、候補に挙がった名シーンは2つありますので、おふたりに好きな方を選んでもらいます」

「はいはい……」

「1つめ。『図書室の前で告白!』」

 母がキャッキャッと喜んでいる。嫌な予感がする。

「もちろん、リアリティ追求のため学校に忍び込みます」

「あ、アホかー!! 学校の生徒に見られてたまるかー!」

「仕方ないわね。じゃあ、2つめ。『バラの花の前で初キッス!』」

 俺はガクーッと膝をついた。

 芹沢が眉間にしわを寄せつつも、コミックスのそのシーンを見る。

「これなら寸止めで行けるだろ」

「おおっと〜! カイ君、勇者です!」

 姉貴が母と手を取り合って喜んだ。

「ほら、さっさと済ますぞ」

 芹沢は俺の手を引いて、庭に植えてあるピンク色のバラの前へと連れて行った。

 意外とノリノリのようで、太陽の角度などを見ながらベストポジションを探し、コミックスを見てポーズの確認までしていた。

「はいはーい! タカちゃん、嫌な顔しない!」

 姉貴がカメラを手に撮影をしたものの、俺の表情が硬いだの、もっとくっつけだの、NGの連発だ。

 そのうち、とうとう芹沢が痺れを切らして、

 ムニッ!

 本当に唇を押し当てた。

 一瞬、真っ白。

 ハッと慌てて暴れるも取り押さえられ、「ここまでやってリテイクになったら目も当てられん……」と思い、最後にはされるがままだった。

[*prev][next#]

15/16ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!