同じ家 15 「ママねぇ、このシーンの写真が撮りたいんだけど」 「あー、いいわねぇ!」 姉貴と母が相談している間、芹沢がちらりと俺を横目で見た。 「うん、まぁ、その……似合ってるな」 「頼むから褒めてくれるな」 「……だよな」 そんなことを話していると、母たちの話もまとまったようだ。 「協議の結果、候補に挙がった名シーンは2つありますので、おふたりに好きな方を選んでもらいます」 「はいはい……」 「1つめ。『図書室の前で告白!』」 母がキャッキャッと喜んでいる。嫌な予感がする。 「もちろん、リアリティ追求のため学校に忍び込みます」 「あ、アホかー!! 学校の生徒に見られてたまるかー!」 「仕方ないわね。じゃあ、2つめ。『バラの花の前で初キッス!』」 俺はガクーッと膝をついた。 芹沢が眉間にしわを寄せつつも、コミックスのそのシーンを見る。 「これなら寸止めで行けるだろ」 「おおっと〜! カイ君、勇者です!」 姉貴が母と手を取り合って喜んだ。 「ほら、さっさと済ますぞ」 芹沢は俺の手を引いて、庭に植えてあるピンク色のバラの前へと連れて行った。 意外とノリノリのようで、太陽の角度などを見ながらベストポジションを探し、コミックスを見てポーズの確認までしていた。 「はいはーい! タカちゃん、嫌な顔しない!」 姉貴がカメラを手に撮影をしたものの、俺の表情が硬いだの、もっとくっつけだの、NGの連発だ。 そのうち、とうとう芹沢が痺れを切らして、 ムニッ! 本当に唇を押し当てた。 一瞬、真っ白。 ハッと慌てて暴れるも取り押さえられ、「ここまでやってリテイクになったら目も当てられん……」と思い、最後にはされるがままだった。 [*prev][next#] [戻る] |