同じ道、同じ言葉 9
「カケル君、男の子がそのサイズ入るかな。7号だよ?」
なっちゃんが心配そうに言うが、瀬名はVサインを出した。
「先輩なら余裕!」
「……うわー、ほんとだ! 細っそー!」
俺の姿を認めた途端、なっちゃんの表情が輝いた。どうしてほんとに女子ってやつは……。
「ではでは、失礼して……」
なっちゃんは部屋の隅に衝立を立て、その向こう側に俺を引きずり込んだ。
「わあああ、ちょっと誰か助けたまえ!」
俺の願いも虚しく、浴衣はあっという間に剥かれて投げ捨てられた。
衝立の向こうから、「うーん、これはなかなかすごいシチュエーションだね!」と小山内の声が聞こえたが、こちらはそれどころではない。
半裸の俺の上にメイド服がバサッと落とされて、なっちゃんが「さあ、あなたはもうそれを着るしかないのよ」と笑った。笑顔が怖い……。
瀬名が「ニーソもよろしくね!」と声をかけてきた。
「ほんとにカケル君は絶対領域好きだよねー。白? 黒?」
「今日は白で!」
「オッケー」
今日は、ってなんだ。今日は、って。
嫌々ながらもメイド服とオーバーニーソックスを身につけると、なっちゃんに薄く化粧を施され、最後に髪の毛を整えてカチューシャをはめられた……。
「うーん、我ながら上出来!!」
足の重い俺をグイグイと衝立の外に押し出すなっちゃん。
「ひゅ〜、かーわいー!!」
西山たちが口笛を吹いてはやし立てた。
「先輩、最高です! 完璧な絶対領域です。二次元の住人です!」
と、瀬名は大興奮だ。一度死ね。
小山内は俺の姿を写真に収めていたが、どうして一緒に罰ゲームを受けているはずの小山内にまでそんな辱めを受けなければいけないのだろう。
皆慈は俺の女装を哀れに思っているようで、ハァ、とため息をついていた。
「芹沢サンはこういう属性ないんスね……。あっちにはてきめんみたいですけど」
瀬名の指さす先にいた飛鳥は、うつむき加減で必死に元素記号をそらんじていた。
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