[携帯モード] [URL送信]
違うアイツ 1
 耳障りなブレーキ。

 鈍い衝突音。

 鳴り響くサイレン。


 ……ベッドに横たわった包帯だらけのアイツ。


『手術は成功しましたが、最悪の場合も念頭に……』


 医師の言葉に崩れ落ちる足下。

 俺は暗闇に堕ちていった。

 どこまでも……。



「…………」


 悪夢から目を覚ました俺は、のろのろと身体を起こした。



 あの日、俺は何もかもから逃げ出すように、バイクを走らせた。

 何も考えられなかった。

 夢とか希望とか、色々あったはずなのに……

 一瞬でバラバラに砕けた。



 頭の中に声がよぎる。

 ――暴力で守れるものもあるが、失うものも多い。

 確か……唐草って先公。

 ジジイのくせに、アホみたいにぶっとい腕をしてた。

 ――守ったはずのものまで失う羽目になる。

 唐草はそう言った。

 ……それは、本当の話だった。



 俺のせいだ。

 俺がアイツをあんな目に遭わせた。



 あれからアイツは無事に目を覚ましたのだろうか……。


 医者の言う「最悪の場合」が頭によぎり、身体が震えた。


 涙は出ない。

 アイツは無事だ、と言い聞かせて。

[*prev][next#]

2/20ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!