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 洗面所から出てきたところで、買い物に出ていた母がちょうど帰宅した。


「ただいまぁ。タカちゃん、戻ってたのね。……あらっ、こちらはどなた?!」

「クラスメイトの芹沢君。うちの漫画を読みに来た」

「あらあらあら! まぁまぁまぁ! いらっしゃいませ、タカちゃんの母です! 知らなかったわぁ、タカちゃんにこんなカッコイイお友達がいたなんて」

「ど、どもッス……」

 芹沢はうちの母の迫力に押されまくっていた。

「あとでタカちゃんの部屋にお飲物とお菓子持っていくわね」

「気にしなくていい」

「そんなわけにはいかないわっ。芹沢君、甘い物は大丈夫?」

「あ、ハイ……」

「今日はシュークリーム買ってきたの。後で紅茶と一緒に持っていくわね。多めに買ってきて良かったわぁ」

 母はウキウキと弾みながら台所へと引っ込んでいった。


「……テンション高けぇ」

「俺が家に人を招いたのは初めてなので、浮き足だっているのだと推測する」

「ギャハハ、マジかよ。お前どんだけ友達いねーんだ」

「これまであまり必要性を感じなかったのでな」

「必要性! まー、俺も滅多に家に人なんか呼ばねーけどな。中学ン時は暇さえありゃ喧嘩ばっかしてたしよ」

「最近は喧嘩してないのか」

「ちゃんと毎日ガッコ行ってんだろが」

「確かに」


 芹沢は不良ではあったが、出席率はやたら良かった。

 しょっちゅう居眠りしているので成績は悪かったが。

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