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どりーむな文章
さなたん(真田誕生日企画)
下校の鐘が校内に鳴り響いた数分後、いつもの如く部室へ向かうと今日だけは雰囲気が違っていた。

原因は知っている、何が起こるのかもある程度の想像はついている。

「副部長、誕生日おめでとうーっす!」

部室の扉を開けると赤也の明るい祝福の声と左右で鳴り響くクラッカーの音。

首を捻ると丸井とジャッカルが笑顔で、蓋の空いた若干煙の出ているクラッカーを構えたまま祝福の言葉を述べてくれた。

頬が自然に緩んでくるのを感じていると、前の方では幸村がいつもの食えない笑みを浮かべている。

「流石に3年目となると驚かないか。」

「俺だって学習する。」

俺がそう返すと、幸村はクスリと笑い『おめでとう』とリボンが華やかに巻きつけられた小箱を差し出した。

誕生日プレゼントか……中身はなんだろうか。

「おめでとう、弦一郎。」

「俺からもじゃ。おめっとさん。」

「はい、私からもどうぞ。」

「おめでとう。ショボくて悪いが、受け取ってくれ。」

「ほい、おめでとう。3倍返しでシクヨロ。」

「おめでとうっす。俺、頑張って選んだんすよ!」

次から次へとプレゼントが乗せられていき、俺の両手はあっという間に埋まってしまう。

去年の今もこのように両手いっぱいのプレゼントを貰った気がする。

「モテまくりですね、真田さん。」

ふっと声がする方を見ると、俺が大切に思ってやまない人物が幸村とはまた違った種類の食えない笑顔をしている。

そう言えば、彼女からは受け取っていない。プレゼントが欲しいなどとは自分でも図々しいだろうと思ってはいるが。

期待はしていた……正直言うと数日以上前から。恋人である綾辻は何をくれるのだろうか、と。

綾辻は……。」

「あたしのは最後で、まずみんなの開けてみましょうよ。」

「そうそう、俺ら頑張って選んだんだぜぃ。開けろ開けろぃ。」

丸井に背中を押され、俺は仕方なく机の上に貰ったプレゼントを置く。

綾辻は俺の誕生日を忘れてしまったのだろうか。だとしたら、変に誤魔化さず正直に言ってもらいたいのだが。

まぁ、正直な彼女のことだ。後で言うのかもしれない。今は言う通りプレゼントを開けてみよう。

とりあえず、固い感触と重めのプレゼントを手に取ってみると蓮二が口を開いた。

「それは俺からだ。」

随分と厳重に包装されている……何重にも包まれた包装紙をめくっていくと、蓮二らしいと言えば蓮二らしいものが出てきた。

藍色の湯呑とそれよりも少し小さめの朱色の湯呑……これはまさか。

「夫婦湯呑だ。と一緒に使ってくれ。」

絶対からかい半分だ……だが、悪い気はしない、だが、少し恥ずかしい……。

素直に礼が言えずにいると、ジャッカルが細長く包装された袋を取りあげ、俺に差し出した。

「これも一緒に使ってくれよ、夫婦箸っつーんだっけ。」

開けてみると言った通り、黒と赤の箸のセット……夫婦箸だ。

もしや、他の奴らもこの類なのでは……いや、嬉しくないと言えば嘘になるが……。

「あ、俺は夫婦茶碗だよ。」

幸村が笑顔で開けだす包みには淡い青と赤のサイズ違い、色違いの茶碗のセット。

「……あ、ありがとう。」

戸惑いながらも礼を言うと、ふっと書店の袋が目に入る。

手に取って見ると柳生が『それは私からです』と眼鏡を上げて言った。

本……俺の好きな歴史関連の本だろうか、それとも柳生が勧めるミステリー小説だろうか。

ようやく普通のプレゼントが来た、と俺は安心して袋から本を取り出してみる。

するとタイトルには……『夫婦円満の秘訣』と書いてある。

「失礼ながら真田くんは女性の心がわかっていない部分がありますからね、是非とも参考にしてください。」

本人に悪気はないのだろう、嫌味のない笑顔で眼鏡を上げながら柳生はそう言う。

まさか、柳生までもこの類のプレゼントを持ってくるとは……。

いや、だがもう4人も夫婦系のプレゼントを持ってきた。もうネタぎれしてもおかしくはない!

次は大きめのプレゼントを開けてみることにする。

サイズはあるが重さはない、クッションか何かだろうか、今度こそ普通のものを……と祈りながら俺は包装紙を剥がす。

「枕……?」

表にはでかでかと『YES』と書かれてある、裏を向けてみると今度は『NO』と書いてあった。

「それは俺からじゃ。使うといいナリ。」

「そうだな、有り難く使わせてもらおう。」

仁王が『使え』と言うので俺は普通に返事をしたつもりだったのだが、部室内からは何故か笑いが漏れる。

まさか、この枕には別の使い方でもあったというのか!?

丸井や幸村、赤也はさも愉快そうに笑っている。蓮二は芳しい反応を見せず無表情。

だが、柳生とジャッカルは顔を見合わせ苦笑い、といった感じだ。

この反応の差は一体……。

「副部長ー! それ使うときはこれも必須っすよ!」

愉快そうというのか、妙に口の端を上げた笑いを見せながら、赤也が一番小さい包みを俺に手渡す。

「これも必須だぜぃ。」

丸井がそれに便乗して、ビンではないが何やら液体を入れたボトルの入った包みを渡す。

この二つが最後のプレゼントなわけだが……俺は赤也と丸井の様子に少し警戒しながらも包みを開ける。

ボトルは手に収まるサイズで中身はピンク色をしてる液体、入浴剤だろうか。

小さい包みからは華やかに蝶が描かれた薄めの箱が出てきた。

なんとも女性が好みそうな箱だが、それを俺にどうしろと言うのだろうか。

箱の端をみると『医療用具』と書かれてある……医療? 湿布か何かか?

「買うとき恥ずかしくなかったですか?」

「ムチャクチャ恥ずかしかった。あれ、買うのスッゲー緊張する!」

「俺は通販で買ったから、全然オッケーだぜぃ。」

今まで黙っていた綾辻がやっと口を開くが、話す相手は俺ではなく赤也と丸井のようだ。

買うのが恥ずかしい物を俺に渡したのか……ますます中身がわからん。

仁王がくれた枕と丸井がくれた入浴剤と一緒に使うもので、買うのが恥ずかしいもの……。

箱を手に俺が悩んでいると、見かねたジャッカルが言いにくそうに答えを言う。

「真田……赤也が買ってきたのはコンドームだ。」

「コンドームとは……あの保体の教科書に載っていた……。」

俺の頭の中にモヤモヤと浮かぶのは教科書に出てくる男女が使い方について説明する図……。

「避妊具だな。で、ちなみにあの仁王がくれた枕と丸井がくれた液体の使い方は……。」

今度は蓮二が先程の『YES』『NO』と書かれた枕と入浴剤の使い方について説明を始める。

…。

……。

…………破廉恥なっ!

「お、お前たちは何を買ってきてるのだ! 俺達はそんなふしだらな関係ではない!」

顔の温度が上がってくるのを感じながら、俺は仁王と赤也、丸井を叱りつけるが二人はニヤニヤするだけだ。

「俺達のプレゼントは夫婦でなる気満々で受け取ってたくせにね。」

との日常生活は妄想していたが、性生活までは妄想してなかったんだろう。」

幸村と蓮二のセリフは当たっている分言い返せない……。

「でも、いずれは使うでしょ。」

俺なら恥ずかしくてどもってしまいそうなことを、彼女はさらっと言いのける。

「お、お前は……少しは恥じらいというものをだな……。」

呆れ半分恥ずかしさ半分で俺がそう言うと、綾辻は少し中の膨れた封筒を手渡した。

「プレゼントになるかはわかんないですけど、おめでとうございます。」

にこりと微笑みを見せながらの祝福の言葉に俺は少し照れくさくなる。

俺は照れ隠しに『うむ』とだけ返して、封筒の中身を取り出してみるが、中を見てさらに照れくさくなった。

何故かと言うとだな……封筒の中には……。

「スッゲー! 婚姻届!」

赤也が騒いでいる通り、紙には『婚姻届』と書かれてある……ご丁寧に『妻となる人』の欄は全て記入済みだ。

綾辻の名前、住所、本籍、印鑑までしっかりと。

「提出してくれるの、待ってますね。」

そう言う彼女は今まで見た表情の中で一番素敵だと思える顔をしていた。

「へぇ、凄いな。」

綾辻さんも夫婦になる気満々ですね。」

「そんじゃ、結婚式でのスピーチは俺がやっちゃろう。」

「では、俺達は式で流す為に弦一郎の恥ずかしい写真でも提供しよう。」

「あ、それいいね。」

「んじゃあ、俺はウェディングケーキ食う役で。」

レギュラー陣が好き勝手言って盛り上がっている。いつもの俺なら『からかうな』と怒鳴っているのだろうが。

今だけは嬉しく思えてならない。

「ありがとう。ここにいる全員の気持ちとプレゼントをとても嬉しく思う。」

俺がそう言うと全員が笑顔でこう言った。

――15歳の誕生日おめでとう!






はぴばー





アイスキ様の企画に書いたものです。
一応、キャラ的には繋がってるんで続きに置きました。
しかし、企画ものにこんなネタを書く自分は最悪ですねww
まぁ、中学生ってそんなもんだー。

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あきゅろす。
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