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どりーむな文章
ニックネーム
部活も終わり、ちらほらと部員も帰っていき部室内の人口密度も下がっていく中、丸井とが雑談に花を咲かせていた。

このペアは珍しい……。少しリサーチと行くか……。

俺はデータをまとめるフリをしながら、意識だけを二人に集中させた。

「……そんでさー、そこで仁王が柳生にs」

「仁王さんって誰ですか?」

マネージャーになって早数週間……このマネージャーは未だにレギュラーの名前を覚えていないらしい。

弦一郎以外のレギュラーともすっかり馴染んできたな、と先ほど幸村と話していたのだがな……見事に裏切ってくれる。

「……綾辻、お前な。いい加減部員の名前覚えろぃ。ほら、あの白髪で後ろで髪くくってる……。」

丸井もこれには呆れたようだが、丁寧にジェスチャーもまじえながら仁王の特徴を教える。

「あー……詐欺センパイ。あの人影が薄いから、なかなか覚えらんないんですよね。」

それはお前が弦一郎しか見ていないからだ。と、言いたいが続きが面白そうなのでやめておこう。

俺の代わりに丸井がツッコミを入れる確立98%……。

「……あいつのどこが影薄いんだよ。髪の毛とか目立ってないか?」

「えー……別に普通かなー。てーか、ニックネームで呼んだ方が距離縮まった感じしません?」

あの人目を引く白髪は『普通』で片付けられてしまったようだ。仁王も気の毒に。

そもそもはニックネームで距離を縮めるより、まず名前を覚えることが先だと思うのは俺だけか。

「そーかー? お前の場合悪意を感じなくもないんだけど……。」

俺はまだ悪意を感じるニックネームをつけられてないが、赤也と丸井は確実に悪意が混じっているだろうな。

なんせ、『バカ也』と『丸いセンパイ』だからな。

「気のせいですよ。愛故です、愛故。」

「ニックネームに愛があるなら、なんで真田は『真田さん』って呼んでんだよ?」

そうだな、は弦一郎以外のレギュラーは勝手につけたニックネームで呼んでいるくせに、弦一郎のことは『真田さん』と呼んでいる。

ちょうど横でわざとらしく単語帳をめくりながら、俺と同じように二人の会話に聞き耳を立てている弦一郎も以前ボヤいてた。

何故俺だけ苗字で呼ばれているのだろうか、と。

「そりゃ、好きな人はちゃんと名前で呼んだ方がいいでしょ。」

「……ニックネームは愛故なんじゃないのか?」

「愛の種類が違うんですって。てか、ほんとは弦一郎さんって呼びたいっちゃ呼びたいんですけど……。」

この言葉に未だ単語帳をめくり続ける弦一郎の耳がびくっと反応した。

そうか、弦一郎はに『弦一郎さん』と呼ばれたいのか。見た目の割に乙女思考というかなんというか……。

「ふぅん……呼べばいいじゃん。喜ぶんじゃねーの?」

後押しするような丸井の台詞にまたもや、弦一郎の耳がぴくっと動いた。

きっと心の中で丸井に感謝の言葉を述べているに違いない。

だが、そんな弦一郎の思いは肝心のには届かないようだ。

「やー……でも弦一郎さんって呼びにくいじゃないですか。」

「なるほどなー。ちょっと長い名前だしな。」

二人の言葉に呼びにくい名前の弦一郎の周りの空気が若干重くなる。傷ついているな。

「だから、真田さんで妥協したんです。」

「妥協かよ。ま、名前はどーしようもないもんな。」

『呼びにくい』『妥協した』見えはしないが、鋭いナイフが弦一郎に向かって飛んでいく。

これには少し……同情したくなるな。

俺は慰めのつもりで呼びにくい名前弦一郎の肩をぽんと叩いた。

「……蓮二。」

「どうした?」

眉をきゅっと寄せた真剣な顔はまさに中年……いや、まさに娘との関係に悩む父親のよう……いや、どうして中学生とは思えない顔だ。

そんな真剣な顔をして、弦一郎はふざけたことを真面目に言う確立100%

「……改名と言うものは一体どうすればいいのだろうか?」

とりあえず、部内でこいつが一番『たるんどる』気がするのは俺だけではないと信じている。

 

 

おわり





コメント
名前で呼んで欲しいらしいです。
つーか、真田って絶対ムッツリですよね?w

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