01
side 千尋
「……またか、」
テニスコートの方を見ながら一人呟く。テニスコートではレギュラーと少女が楽しげに話している。
今は放課後、部活の時間。それなのにいつまで経っても練習を始めようとしない彼らに苛ついている私…有沢千尋。ここ、立海大附属中学校男子テニス部のマネージャーである。と言っても、好きでこんな面倒なことをしているわけではない。部長の幸村に無理矢理入部させられた被害者なのだ。その幸村は今は委員会の仕事かなんかで居ない。まあ…幸村が帰ってきて酷い目にあうのは彼らだ。私は関係ないから気にしないことにしよう。
とりあえずドリンクは人数分作っておいた。つか、マネージャーは私一人だけではないのだよ。テニスコートでレギュラーと戯れてる少女こと真崎歌奈も私と同じくマネージャーだ。
だが彼女ときたら仕事をしない。それなのにマネージャーなのは彼女が立海のレギュラーから異常なほど好かれているから
「ハァ…」
ため息がこぼれる。今日1日で何回ため息をしたことか。
「お疲れさん」
後ろから聞き慣れた声が聞こえ、振り向くとやはりテニス部レギュラーの一人…仁王雅治がいた。いつの間にそこに……
「におー…お前どうにかしろよ」
「面倒、じゃ」
「私だってな、こんな面倒なことしたくないっての。むかつく」
「真崎は悪い奴ではないじゃけどな…」
「そーだねー、だからこそ面倒」
少し面倒なことに真崎さんは決して悪い人ではない。マネージャーの仕事だってたまに手伝ってくれるしたまに。ほとんどレギュラーの奴らが真崎さんを引き止めてああなってるだけだ。分かってるよ。分かってるから、ちゃんとしてほしい
「まっ、真崎が作るドリンクより千尋のドリンクのほうが好きじゃよー」
そう言いながらドリンクを持って部室から去っていく仁王。まだ休憩時間じゃないっての
「まあ…ありがと」
まったく、そんなこと言われたら嬉しすぎて顔がにやけるじゃん。
仁王のばーか。
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