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小説
泣きたくない
「...聞いてた?」

「えっ?」


「どうしたんだい?君らしくないね。ずっと上の空なんて。」


あたしらしいってどんなのよ。


なんて言い返す気にもならないもんだから、

怒られても仕方がないと思った。


「それでさ、来週のパーティーのことなんだけど...」


あたしの頭のなかはいつもいつも、アイツのことで占領されていた。


朝も昼も夜も、彼と居る時間でさえも。

「今回は一段と凄いんだよ!リカも知ってるだろう?世界的に有名な...」



ねえ、

あたし、バカにされたの?

ただのその場しのぎの遊び相手?




あたしの髪に触れた手も、

耳にかけた吐息も、

塞ぐように重ねた唇も、


感触全部、残っているわ。


そんなもの、早く忘れたほうがいい?


どうしたらいい?


教えてもくれないの?






...会いたい

今すぐ会いたい...




願うしかできない自分がとても惨めで、

こぼれそうな涙を必死にとめた。


流れてしまえば全て認めたことになる。


どこかでまだ信じていたくて、

ほんの少しでも期待していたかった。


悲しくなんてないわ。

悲しくなんてない。


あなたがどうであれ、あたしは忘れていないのよ。

まだ、信じていてもいい?


忘れなければ傷付くことはわかっていたけど、

あたしはどうしようもなくて、


隣で不機嫌な顔をしている彼なんか視界にも入らなかったんだ。





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