小説
太陽が眩しくて
どんなに強く想っても、変わらぬ朝はやってくる。
「リカ、このピアス、どうかしら?あとね、今夜着ていくドレスのことなんだけど」
今夜?
朝からどちらのお姫様の登場よ。
いい年していい加減にしてよ、光り物ばかり買って。
「いいんじゃない。」
あたしはトーストをかじりながら適当に答えた。
「ちゃんと見てよ!朝からよく食べるわね!そんなに食べると太るわよ!」
はいはい。
頭の先からつまさきまで完璧にしちゃって、どこからどうみても男の為じゃない。
幸せそうだこと。
イライラするわ。
辛くなったらすぐ逃げる。
ちやほやされないと生きていけないなんて、
この人みたいにはなりたくない。
絶対に。
鏡の前で浮かれる母親をなるべく無視することにして、食べ終えた食器を洗った。
溜まっていた昨日の分も。
連絡先くらい聞いておけばよかった。
あたしは同じ食器を何度も洗った。
名前くらいしか知らないアイツにどうして惹かれてしまう自分が不思議で可笑しくて。
綺麗だった。
あたしが観た景色が、初めてあんなに輝いてみえた。
アイツが居た歩道橋。
見慣れた景色なはずなのに、特別に輝いてたの。
綺麗だったなんて言ったらきっと、大笑いするわ。
似合わないよ、って。
そうでしょう?
「アキ」
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