小説 過ち そこは、とても暖かくてあたしとアキだけの空間で、 お互いが同じ体温になったのを確かに感じた。 アイツの目は、 あたしを縛るくらい強くて、ときに愛しくてたまらないものを映しているようだった。 あたしはアイツのオモチャみたいに弄ばれた。 わざとらしく拒んだ声もすべて見抜いて、 許可もないのに当然の如く次々と触れる。 痛いくらい強く激しく。 それから、ガラス細工を扱うように優しい指先であたしを何度も撫でた。 あたしは見事にアイツしか見えなくて、情けないくらい、されるがまま反応していたんだ。 けれどアイツの腕の中に埋もれて幸せだと思った。 何の防備も無い自分を疑いもせず、安心していた。 それからあたしは深い眠りに落ちた。 どれくらい長い間眠ったのだろう。 あたしは弱々しい光で目を覚ました。 ボーッとしながら、ふと隣をみると、アイツは姿を消していた。 「...そういうことね。」 出会って間もないアイツを信じた自分がバカだった。 あたしは別に悲しくもなければとくに憤りも感じなかった。 [*前へ][次へ#] |