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石楠花物語中学生時代
イベントコンクール
駅前会館・ロビー
   バレエの衣装を着た人が沢山いる。

語り【てな訳で、ついに最終日…その前に、麻衣と千里は閉会式の前にバレエの発表会があった。】

   その中に、コッペリアの衣装を着た千里とスワニルダの麻衣。千里は、定期的にトイレの出入りをしている。

麻衣「せんちゃん、大丈夫?お腹の調子悪いの?」
千里「いや…」

   困ったように

千里「緊張でさ…おしっこ近くなっちゃって…」
麻衣「せんちゃん、リラックスリラックス…」

   千里、泣きそう。

千里「どうしよう…もし又、おもらししちゃったら…」
麻衣「せんちゃん、悪いこん考えてると、ふんとぉーにほの悪いこんが起きちまうに。」

   笑って肩を叩く

麻衣「あんたなら大丈夫よ。リハーサル通りに踊ればいいの。お客さんなんてみんな花梨の樹だに。」
千里「花梨の樹?」
麻衣「ん。つまり、お客さんなんて誰もいない…周りは樹だけっつーこん。な、あんたもだだっ広い林ん中で一人で堂々と踊ってるとおもや、緊張しんら?」
千里「麻衣ちゃん…」

   弱々しく微笑む。

千里「ありがとう!!」
麻衣「一緒に頑張ろう!!」

   千里の手を引いて、控え室の方へ歩いていく。


同・リサイタルホール
   多くの観客が来ている。中には夕子と珠子、頼子、忠子もいる。

夕子「なぁ姉さん、いつまで千里にバレエとピアノやらせる気なんだ?いい加減やめさせちまいなよ。」
珠子「そんなの、せんちゃんが可哀想よ。あの子、あんなに好きでやっているんですもの…」
夕子「そうは言ってもねぇ…千里、ピアノとバレエの練習のせいで最近は勉強の方が殆ど進んでないみたいなんだよ。だから見な!!昨年からずっと赤点続きじゃないかい。」
珠子「あの子だってあの子なりに頑張っているわ。もし、せんちゃんからピアノとバレエを取り上げちゃったらあの子の楽しみが一つもなくなっちゃうでしょ。だから夕子、ね。私も、頼子と忠子が小学校に上がったら仕事始めるから…ね。」
夕子「でもねぇ…」
珠子「ほら、始まるわよ。」

   ブザーがなる。


   コッペリアの演目が始まる。千里はコッペリアで女装をしているが夕子は気が付かない。

夕子「おい、千里は何役なんだい?何処にいる?どうせ又、エキストラだろ?」
珠子「あら夕子、甥の顔が分からない?」

   笑いながら指を指す。

珠子「あの機械人形の女の子よ。」

   夕子、オペラグラスを翳す。

夕子「おやまぁっ!?何てこったいあの子は!!」

  
   千里、顔を強張らして踊っている。 


   カーテンコールで終わる。

同・控え室
   麻衣と千里。

麻衣「やばっ、私へー原村行かんくちゃ!!」
千里「あ、僕もだ。君何時から?」
麻衣「16時半過ぎに閉会式が始まるの。だで、50分の電車に乗らんと間に合わんのよ。」
千里「そうかっ。」
麻衣「あんたも、いくら諏訪市役所とは言えども急がんくちゃ!!何時?」
千里「同じだよ。16時半過ぎ…っ。」

   二人、他の出演者に頭を下げて急いで控え室を出る。


同・出入り口前
   千里と麻衣。

麻衣「ほいじゃあ…ここで。」
千里「ねぇ、君は?終わったら今日はこのまま原村のお家へ入っちゃうの?」
麻衣「まさかぁ。ちゃんと諏訪へ帰ってくるに。どいで?」
千里「ねぇ…君が終わるまで、僕…どこかで待ってていい?」
麻衣「勿論…いいに。でも、あんた遅くなっちまうらに。」
千里「大丈夫…。ね、いい?それとも…嫌?」
麻衣「いいに、分かった。ほいじゃあ、又後でな…あんたの検討を祈る。」
千里「こちらこそ。」

    二人、別れる。千里、上諏訪駅に入っていく麻衣を何処と無く寂しそうに見送る。


    麻衣、電車に揺られている。すずらんの里という駅で下車。


原小学校・校庭
   閉会式が行われている。

村長「それでは、平成15年度から七年間…原村振興観光大使を努めていただく看板娘を発表致します。」

   全地区の娘たちや商業、婦人会団体が集まっている。矢部川野々子、田島茶目子、優勝は貰ったと言うように鼻をツンッと鳴らす。麻衣はあっけらかんとしてぽわーんと立っている。会場の後ろの方には健司、未央、千歳、望美、秀一。

村長「観光大使、グランプリは…」

   会場を見回す。

村長「払沢地区婦人会・野菜料理推進部の看板娘、柳平麻衣さん、中学二年生です。」

   麻衣、驚いてキョロキョロ。婦人会の人達も驚くがワッと麻衣に駆け寄る。

村長「おめでとうございます。麻衣さんには…」

   麻衣、村長から色々インタビューや賞品を受けている。野々子、茶目子は悔しそうに舌を鳴らす。

   麻衣、眼鏡をとって挨拶をする。

健司「!!?っ」

   赤くなって麻衣を二度見。

健司(麻衣…あいつが眼鏡を外した…可愛い…。)

   赤い顔を隠すようにそっと席を外す。

未央「お、おいちょっとタケ…どこ行くんだよぉ…おいっ!!」
望美「何だ何だ?一体どうしたんだ?」

   他四人も健司の後を追いかけていく。


原村役場・駐車場
   健司、入り口の階段に座ってぼんわり。そこへ、四人。

秀一「おいおいタケ、お前一体どうしたんだ?」
千歳「そうだよ、急に席外すだなんてさ。」

   健司、赤くなったままぼんわりとしてため息。

千歳「んー?」
健司「なぁ、チーちゃん…」
千歳「何だ?」
健司「俺の顔…紅いか…?」
千歳「はい、何だよ急に…」
健司「ほりゃ俺が聞きたいよ…。あの麻衣…見たか?麻衣が眼鏡を外したんだ…」
秀一「あぁ、外したな。それがどうした?」

   ニヤリ。

秀一「まさかお前っ!!」

   健司の肩をいたずらっぽく叩く

秀一「そういうこんか、そういうこんか!!なるほどっ!!」
望美「は、何だよシュウ、」
未央「お前分かったんなら教えろよ。」
秀一「あのな、タケはな?タケはな?」

   興奮して笑いを堪えている。

秀一「あのな、」

   他三人に耳打ち。

秀一「…何だよ。」
千歳、望美、未央「えーーーっ、うっそだろ?マジで?」

   三人、ニヤニヤと健司を見る。

健司「みんなして笑うなよ…」
千歳「つまりお前は、」
望美「柳平麻衣に」
未央「恋をしちまってるってわけだ!!アーッハハハこりゃおかしいや。お前のような男がな。」
望美「流石は御曹司の坊っちゃんだ、やることも一歩違うぜ。」
健司「てっめぇーらなぁ!!」

   食って掛かろうとするが急に弱気になる。

健司「なぁ、みんなどーすりゃいいんだ?俺のこの気持ちどうすりゃ収まる?晴れるんだ?」
千歳「さぁーな、」
望美「俺らはまだほんな気持ちんなったこんないで分からないな。」
未央「助けてやろうにも、分からんし。」
健司「ほんなぁ…」
千歳「とりあえずひとつ言えるのは…」

   悪戯っぽく。

千歳「ストレートに気持ちを伝えるっつーこんじゃね?」
健司「は、はぁ?」

  
落ち込んで膝の間に顔を埋める。

健司「ほれが簡単に出来りゃ苦労しねぇーよ…出来ねぇーでこうやって悩んでんじゃんか。でも…」

   あっさりと吹っ切れたように

健司「今までは、学校とか近所であいつに会えるだけで俺はハッピーだった。今はへ…たまにしか会えねぇーけどさ。ほれでも…」

   有頂天。

健司「時々遊ぶときとか、町で偶々あいつと会えるときとかは…お胸がきゅんとしてときめいて…とっても温かなハッピーな気持ちになるんだ。ほれだけで健司、今は充分。」

   うっとり。

望美「何なんだ、こいつ…」
未央「気持ちの切り替えが早いと言いますか…」
秀一「考えてることややりたいことが今一よくわからねぇ男なんだなぁ…」
千歳「でもまぁ、よかったんじゃね?」

   満足げにニヤリ。

千歳「タケの青春が、始まって。こいつもやっぱり、どんなにチビでも男なんだよなぁ…」

   健司を美見ながら。

千歳「こいつしばらくはずっとこんな感じだと思うぜ。」
望美「だな。」
未央「ま、普段のツンツン生意気よりはいいが…」
秀一「これはこれでなんかこいつらしくなくて気持ち悪いかも…」

   健司、相変わらずぽわーんとしたり、有頂天になって浮かれ出したりうっとりしたりして自分がわからなくなっている。

   そこへ麻衣。

麻衣「何話とっただ?」

   健司、麻衣に気がつくとハッと赤くなって舌を向き、顔を伏せながら去っていく。

麻衣「…今の健司だら?…何かあっただ?」
千歳「さぁな…」

   四人の男たち、ニヤニヤしたりクスクスと笑いを堪えている。

麻衣「?」

   キョトンと首をかしげる。


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