[携帯モード] [URL送信]

石楠花物語中学生時代
麻衣の仮病大作戦

同・教室
   授業を受ける麻衣と千里は隣同士の席。麻衣、ちらりちらりと千里を気にしながらノートをとっている。

麻衣「(小声)大丈夫?」

   千里、小さく頷く。

千里「うん…ありがとう、今のところ平気だよ…。」


   四時間目。  

   ノートをとっている。少し、千里の様子が変なのに麻衣、気が付く。

麻衣「大丈夫?」
千里「う、うん…」
麻衣「無理しちゃダメよ…我慢しないで…」

   しばらく。千里、机の下から麻衣に赤い鉛筆を差し出す。


麻衣「!?」

   麻衣、顔をしかめて手を挙げる。

藤森先生「何、柳平さん…」
麻衣「先生っ…」
 
   手で口を押さえる。

麻衣「うっ…気持ち悪いんです…」
藤森先生「大丈夫ですか?急にどうしたの?」
麻衣「分かりません、さっきまで…うううっ…何でもなかったんですけど…」
藤森先生「分かったわ、医務室に行きなさい。」 

   麻衣、小さく千里に目配せ。 

千里「ぼ、僕が彼女に付き添います。」
藤森先生「そう、小口君ありがとう。宜しくね。」
千里「はいっ…麻衣ちゃん、行こっ。」
麻衣「えぇっ…」

   千里、麻衣の肩を抱いて教室を出る。

同・廊下
   二人、教室から離れたところに行く。

麻衣「はぁ…ね。」
千里「麻衣ちゃんすごーい!!迫真の演技だったね。僕まで少し本当に具合悪いのかって驚いちゃったよ。助かった、ありがとう。」

   駆け足。

千里「じゃあ僕、いい?」
麻衣「ほのためにやったんよ。」

   千里、トイレに入っていく。

麻衣「さーてと、次いでだ。私も入ってこっと。」

   麻衣も入って個室に入る。


同・給食ホール
   多くの生徒が食べるなか、麻衣と千里も並んでいる。

千里「うわぁ、やったぁ!!今日は焼きそばカレーパンだ!!それとオリビエ!!」
麻衣「好きだだ?」
千里「うんっ!!焼きそばカレーパンとオリビエは僕の大好物なの。いただきまぁーす!!」

   食べ出す。

千里「んー、おいし。」
麻衣「あんた、今日、お仕事?」
千里「や、今日は幸い休みさ。でも今日はバレエのレッスンがあるの。」
麻衣「バレエの?ほいやぁあんたもバレエやってんだったわね。」
千里「え、君もやってるんだ!?」
麻衣「えぇ!!何処?」
千里「上諏訪の小口先生…」
麻衣「え、私も上諏訪の小口先生の所よ。」
千里「本当に!?」
麻衣「えぇ。もうすぐ発表会よね…コッペリア…」
千里「君も?何かの役やるの?演目は?どの部?」
麻衣「コッペリアだに。私まだこの間もらったプログラム、詳しくは見とらんだけどは、あんたは?」
千里「え、コッペリア?実は僕もだ。…確かもうすぐキャスト顔合わせなんだよね…なに役?」
麻衣「私はねぇ、…スワニルダに選ばれちゃった…せんちゃんは?もしかしてフランツだったりして!!」
千里「が、良かったんだけどね…」

   肩を落としてため息。

千里「コッペリアだよ…」
麻衣「コッペリアって…」

   吹き出す。

麻衣「女の子の役か!!」
千里「笑うなっ!!」
麻衣「ごめんごめん、」

   ふくれる千里をなだめる。

麻衣「やぁ、ほー怒らんでや。」

小口真由美・諏訪バレエ教室
   始めに麻衣、2番目に千里のレッスンが行われている。教師は小口真由美

小口先生「小口君っ!!足元を見ないっ!!顔はしっかり前を向きなさいっ!!」
千里「はい…」

   しばらくレッスンを続ける。


   数十分後。

千里「先生っ、先生…」
小口先生「何ですか、小口君…」
千里「先生っ、トイレっ!!」
小口先生「仕方ないわねぇ…行っておいでなさいっ!!」
千里「ありがとうございますっ!!」

   千里、走っていく。小口先生、やれやれ。

小口先生(あの子、本当に大丈夫なのかしら?主役が勤まるかしら…心配だわ。)


   暫くして千里が戻ってくる。そこに麻衣がいる。

麻衣「あ、小口君帰ってきた。」
千里「お待たせしました先生…あれ、麻衣ちゃん?」

   キョトンとする。

千里「何で?」
小口先生「この柳平さん、小口君の同級生だったのね。もう彼女、レッスン終わったんだけどね、是非君にあって君の練習を見たいって言って…」
千里「そんなぁ…」

   照れて頭をかく。

小口先生「柳平さん、あなたは確かスワニルダのパートはもう全部踊れるのよね。」
麻衣「えぇ。」
小口先生「じゃあ、折角来たんですもの…小口君のレッスン終わったら二人で会わせてみましょうね。」

   千里、ドキリ。

小口先生「小口君、君はまだコッペリアのパートが完璧じゃないからもう少し練習をする必要がありますね。それと、体をもう少し柔らかくすることよ。いい?」
千里「はいっ。」
小口先生「ではレッスン、始めるわよ。」

   音楽がかかり、レッスンが始まる。麻衣、うっとりと見ている。


   最後に二人で合わせている。


   終わる。

小口先生「じゃあ今日はこの辺にしましょう。バレエの発表会は、イベントの最終日を飾るのよ。だから、確りね。」
麻衣、千里「はいっ。」
小口先生「柳平さん、今日はありがとう。」
麻衣「いえいえ、彼のバレエが見れてとても良かったです。せんちゃん、あんたこそ、ありがとな。」
千里「いやぁ…」


   二人、小口先生と別れてバレエ教室を出ていく。


永延
   健司と千里。千里、なかなか中に入れずにしくじっている。

健司「何やってんだよ、千里…大丈夫だって。」
千里「でもぉ…」
健司「誰もお前のこん怒らんし、笑うやつもいないって。だで堂々と入れ。な。俺も一緒に入るから…」
千里「健司くん…分かった…ありがとう…」
健司「お、」

   千里、恐る恐るドアを開けて中に入る。健司も続く。

須山「お、チサちゃん!!やっと来た。心配してたんだよ。お帰り。」
芳惠「体は大丈夫?」

   健司、千里に小粋な目配せ。

千里「はいっ!!ありがとうございます。」
芳惠「仕事は?出来そう?」
千里「大丈夫です。」
芳惠「良かった。なら又今日から…短い期間だけど宜しくね。頑張って。」

   小さく耳打ち

芳惠「トイレに行きたくなったら我慢しないで行きなさい。」
千里「は…はい…」

   千里、恥ずかしそうだが微笑む。

健司「女将さん、」
芳惠「おや君は?チサちゃんの友達かい?」
健司「えぇ。俺、チサの護衛でここへ来たんだけど…どっかこの辺、座っててい?」
芳惠「どうぞご自由に。チサちゃん、この子にドリンク出してあげて。」
千里「はいっ!!」

   カウンターでドリンクを作る千里。須山、笑ってそっと耳打ち。

須山「彼なかなかの好青年だね。何?彼氏かい?」

   千里、思いっきり吹き出す。

千里「まさか、何言ってるんですか須山さん!!やめてくださいよ。決してそんなんではありません!!んもぉっ。」
健司「何?」
須山「君、チサちゃんの彼氏?」

   健司も椅子から落ちる。

健司「オーナー!!変な冗談はよしてください!!」
千里、健司「僕たちは決してそんなんではないんですっ!!」

   須山、芳惠、顔を見合わせる。


   暫くして千里、オープンと言う札をかける。客が少しずつ入ってくる。

客「お、やっとチサちゃんの復帰だ!!」
客「やぁ、良かった良かった!!俺たちとっても心配してたんだよ。」
客「からだの調子はどうだい?良くなったか?」
客「あんまり無理するなよな。」
客「俺たちここにはチサちゃんに会うのが楽しみでくるんだでさぁ…君がいなきゃ寂しいぜ。」
客「そうそう、仕事の疲れを癒せるのは、君の笑顔なんだからさ。」
千里「みんな…」

   うるうる。

千里「ありがとう…ご心配お掛け致しましたっ!!」

   思いっきりにっこり。

千里「ご注文お伺いいたします。何に致しましょうか?」
客「えーと、そうだねぇ…俺はまずはぁえーとっ…」
千里「はいっ…」

   店中の客から注文をとっている。時々スカートを捲られたりお尻を触られたりしてお客手を軽く平手打ちして笑っている。かなり接客にも慣れてきている。健司、ドリンクを飲みながら微笑んで千里を見つめている。


原小学校・校庭
   婦人会などのブースが並んでいる。麻衣、小粋に躍り、歌いながら販売をしている。綿子、文子、英子、摩耶、幸恵は売りながらもバルーンアートを作ってサービスをしている。

   人の並みが切れ、麻衣たちはお茶やお菓子で休憩をしている。

麻衣「はぁ、ごしたい…健司は?」
幸恵「今日も…きっとどこかへ逃げてるわ。」
麻衣「未だに騙された不利をしているのですか?」
綿子「えぇ、そうですよ。」
麻衣「会長まで…どうして?」

   婦人会メンバー、顔を見合わせてニヤリ。

麻衣「?」
文子「家の子は望美。」
映子「家の子は秀一、」
摩耶「家の子は未央。」
綿子「家の子は千歳。」
幸恵「そして、家の子は健司…私達が騙されたと思っていい気になっているあのバカ息子に、最後の最後へ来てギャフンとお仕置きをするのよ。」
麻衣「叱るのですか?」
幸恵「叱りはしないわ…それよりももっと効果があって、あの子が反省するようなこと、私たちはちゃんと考えてあるの。」
文子「私たちは考えてあるの。って、すべて考えたのは岩波さんですわ。」
映子「そうですよ、この企画を考え付いたのだって岩波さんですし。」
摩耶「やっぱり若いだけありますわ。」
綿子「いいえ違うのよ、勿論私達の中で一番若いってこともあるかもしれないけれど、大卒で、現役のお医者様ですもの。」
幸恵「あら嫌だ、私などそんなことはないですわ。」

   全員、笑う。麻衣も微笑む。


小口家・千里の部屋
   千里、布団もかけずにベッドで横になっている。

千里(あーあ…明日がいよいよ最終日か…バレエ公演…僕上手く出来るかなぁ…初めての主役だもんなぁ…でも、初めての主役が女性役って…)

   フッと笑う。

千里(何か、パッとしなくて全く感動しないや…で、その後だよな…公演が終わったらすぐにでも、市役所前に飛んでいかないと間に合わないか…トイレに行く時間あるかなぁ…)

   強く首を降る。

千里(ダメダメダメダメ、いかんいかん。又こんなことを考えてしまった。どうして僕って何かとトイレの事を考えちゃうのかなぁ…ま、いいや。全て。細かいことは明日になってから考えよ…お休みぃ…。)

  
   電気を消すが又つける。

千里「やっぱり怖いな…付けておこーっと。」

   目を閉じる。

千里「ふーっ、寒っ。やっぱり布団かけてないと冷えるかも。寒いや。今度こそ…お休みぃっ!!」

   目を閉じて寝入る。横を向いて、抱き枕代わりに確りと大きなテディベアーを抱き締めて眠っている。




[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!