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石楠花物語小学校時代
卒業

原小学校・校門
   下校。麻衣と健司、並んで歩く

麻衣「健司…」

   健司、強がったように涙を拭う。

麻衣「あんたが泣くなんて…」
健司「いけねぇーかよ?俺だって人なんだ!!悲しくだって寂しくだって…」

   涙を隠す。

麻衣「いえ、いけなくないわ…。ただ、私初めて見たの…。」

   健司の頭を撫でながら

麻衣「あんたの涙…」

   微笑む。

麻衣「綺麗ね…。よしよしよしよし、ほらほらもうじき中学校に入るんよ、嬉しいこんだだでへー泣かんだ。」

   そっと涙を拭う。

健司「お前だって泣いてんじゃんか!!」
麻衣「女の子はいいの…」
健司「ちぇっ…狡いな…女の子って…」

   二人、歩いていく。


岩波家・玄関先
   岩波家と柳平家が集合している。岩波がカメラを構えている。

岩波「はーい、では撮るぞぉ。健司、」

   身ぶり手振り

岩波「お前はもう少し詰めて麻衣ちゃんに寄って…悟は二人の間からもっと顔を出してごらん。」

   オッケーを出す。

岩波「では行くよ、3, 2, 1…」

   岩波も走って輪の中へ入る。

全員「セルリィーッ!」

   笑い合う。

 
小口家・台所
   千里、まだ泣いている。

珠子「全く泣き虫さん、もう泣くのはお止めなさい。ほら、」

   お茶とお菓子を差し出す。

珠子「おやつの菊花茶と桜餅よ。ほら、お食べなさい…」
千里「ありがとう…」

   食べ出す。

珠子「ほら、中学校入学前にバレエの発表会があるのでしょ?しっかり練習しなくちゃね。」
千里「うん…」

   食べ終わると涙を拭って立ち上がる。

千里「ありがとうママ…少し元気が出たよ…。僕、レッスン行ってくるね。」

   退室。珠子、涼しげにフフっと笑う。


バレエ教室
   麻衣、千里初め、主なキャストが合わせをしている。


小口先生「大丈夫、いいわね。小口君、君もとても美しい姿勢で踊れるようになりましたね。それでは、二年間練習をしましたが、明日がいよいよ本番です。頑張りましょう。」
メンバー「はいっ!!」


諏訪駅前市民文化会館・控え室
   メンバーが衣裳や化粧などを整えている。そこへげっそりとした千里。

千里「おはようございます…」
メンバー「あ、おはようございます、」
麻衣「千里君おはよう…」 

   心配そう

麻衣「どーゆーだ、せんちゃん…」
千里「お腹緩いみたい…」

   お腹を押さえる。

千里「その上おしっこ近くて…」

   小口先生、笑う。

小口先生「こらこら、バレリーナがおしっことか言うものじゃありません。」
千里「先生…」

   恥ずかしい。

千里「ごめんなさい…」
小口先生「でもせんちゃん、大丈夫なの?お腹痛いの?」
千里「えぇ…大丈夫です。」

   苦しそうに。

千里「ただ僕、本番に弱いみたいでとても緊張してるんです…それが…多分…お腹に…うぅっ…」

   お腹を押さえて退室

千里「先生ごめんなさいっ、戻ったらすぐに着替えますから…」

   麻衣、小口先生、心配そうに顔を見合わせる。

麻衣「せんちゃん…大丈夫でしょうか?」
小口先生「えぇ…私も心配だわ…。」


同・トイレ
   千里、個室の中で薬を飲んでいる。下痢止め。


同・大ホール
   バレエ公演が始まり、麻衣も千里も主演同士ミス一つ無しにカーテンコール。


同・外
   麻衣と千里。

麻衣「良かった、心配しとったんよ。お腹治ったんね、」
千里「うん、お陰様で。おしっこ近いのも収まったみたい…」
麻衣「良かった、あんたが演舞中におトイレ我慢できなくなっちゃったらどうしようって、私もずっと気がかりだったの。」
千里「ごめんね、君にまで変な神経を使わせちゃって…」
麻衣「いえいえ、」

   うっとり

麻衣「でも、数日後はいよいよ私たち、中学生なんだな、なんかワクワク…」
千里「そうだね…僕もだよ…。」
麻衣「どんな中学生活になるんかしら…委員会、部活は何やろうかしら…。」
千里「僕も…苛められないかな…。もし又授業中におしっこしたくなったらどうしよう…。中学校は50分の授業だって聞いたよ。」
麻衣「又ぁ、せんちゃんはすぐにほーやってネガティブなこんを考える!!もっと楽しく、な。ポジティブシンキング!!ポジティブシンキング!!」

   千里、弱々しく微笑む。

千里「うん…そうだよね、ごめんよ。」

   二人、歩いている。

麻衣「なぁ、はーるかぶりに一緒に遊ぼうよ。」
千里「いいのぉ!?うんっ!!」

   満面の笑みで喜ぶ。麻衣も喜んで千里の手をとると走っていく。


諏訪中学校・体育館
   入学式が行われている。千里、わくわくと胸を踊らせながらも、不安そうな表情。

軈て先生の紹介が行われる。


同・教室
   藤森明美先生、生徒たち。

明美「みなさん、ご入学おめでとうございます。私が今日からみなさんを受け持つこととなりました、藤森明美です、三年間宜しくお願い致します。」

   話をしている。


原中学校・教室
小林由美先生と生徒たち。

小林先生「小林由美と申します。今日から三年間、みなさんの担任を…」

   健司の事をぎろりと睨み付ける。健司、目を見開いて恐怖に固まる。

小口家・台所
   夕飯を食べる家族

小口「千里、どうだった?」
千里「うん、まぁ良かったよ。でも、」

   顔をしかめる。

千里「今度の先生はとても厳しそうなんだ…僕登校拒否になるかも…怖いよ。」
珠子「登校拒否にですって?それだけはこのママが許しませんっ!!」
小口「でも千里、見た目は厳しそうでも以外と優しかったりするものだぞ?」
千里「そうかなぁ?」
小口「そうだとも、とりあえずはまぁ、まずは明日から頑張りなさい。」
千里「はい、」
小口「ほら、もっと勢力つけて!!」
千里「はい。」

   小口、千里のお椀の中にしゃぶしゃぶのお肉を沢山入れる。

千里「うわぁ、パパありがとう。いただきまぁーす!!」


岩波家・台所

健司「って訳なんだぜ?どいで入学早々睨まれなくちゃいけねぇーんだよ?俺なんにも悪いことしてないもん。」
岩波「そりゃ、まぁ健司、先生も受持つ前から小学校の事は小学校の先生から聞いていらっしゃる筈だろうから?お前の事も大体は知っているのだろう?お前がやんちゃで悪戯っ子で…」
健司「俺は悪戯なんてしてねぇーよっ!!」


柳平家・和室
   三つ子が眠っている。

紡「なぁ麻衣、私達いよいよ中学生なんだな…」
麻衣「ほーね…」
糸織「なぁ、皆はなんか部活入る?」
紡「はーいっはーい!!私、ソフトボール!!」
糸織「なら僕、バレー部でもやろうかな?」
麻衣「お、私もほれ考えとるの。ほれか、吹奏楽…な。」

   騒いでいる。

紅葉の声「早くお眠りなさいっ!!」
三つ子「はーいっ、」

   クスクス

紡「怒られちまったな。」
糸織「あぁ、ほいじゃあま、」
麻衣「寝まいか…いっせーのーで、」
三つ子「お休みなしてぇ…」   


小口家・千里の部屋

千里「お休みぃ…」

   大きなテディベアを抱いて寝入る。
 

岩波家・健司の部屋

健司「お休みなして…」

   耳にヘッドホンを当てながら目を閉じて軈て寝入ってしまう。


   だんだんと其々の夜が更けていく。

                  終わり。



   



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