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石楠花物語小学校時代
中学校見学騒動
  生徒、ぞろぞろと教室を出て玄関へ向かう。

千里「ねぇ、先生…トイレ行ってきていいですか?」
金子先生「どうして休み時間に済ませないの?!」
千里「行きました、行きましたけど、又したくなったんです。」
金子先生「仕方ないわねぇ…分かりました。行きなさい。早くするのですよ。」
千里「はいっ、分かりました。ありがとうございます!!」

   トイレに走っていく。

 
同・男子トイレ
   丸山、千里

千里「トイレっ、トイレ!!…あ!」
丸山「あ、千里君。」
千里「修くん、どうして?」
丸山「いや…」

   照れながら

丸山「何か急に又おしっこしたくなっちゃって…千里君も?」
千里「うん、実は…僕も。」

   用をたしだす。丸山は済んで手を洗っている。

丸山「一緒に行こ。僕、ここで君を待ってるよ。」
千里「うんっ。」

   顔をしかめる。

丸山「千里君、まだ?」
千里「うん、あともう少し…」
丸山「もう時間だよ?先生怒ってるよ。」
千里「えぇっ?…うん…」

   手を洗う。

丸山「どうしたの?」
千里「いや…あのさ…」

   言葉を飲む。

千里「何でもない…」

   二人、出ていく。


同・玄関付近
   千里がもじもじし出す。

丸山「千里君?」
千里「ごめん、修くん…すぐ帰ってくる…もう一回トイレっ!!」

   最寄りのトイレへと駆け込む。丸山、少し心配そう。そこへ金子先生。

金子先生「あぁ、丸山君も一緒だったのね?」

   キョロキョロ

金子先生「あら?うちの小口君知らない?」
丸山「あぁ、トイレです。」
金子先生「まだなの?」

   少々イライラ。そこへ、千里が青白い顔をしてかけて来る。

金子先生「小口君っ!今何時だと思っているの?みんなもう中学校へ行きました。あなたも急ぎなさい。」
千里「はい…」

   金子先生、声を潜める
 
金子先生「うんちなの?」

   千里、紅くなるが首を振る。

千里「いえ…先生…実は…」

   恥ずかしげに口をつぐむ。

千里「いえ、何も…」
丸山(千里君…?)  


諏訪中学校・給食ホール 
   6年生全員が入って並ぶ。そこへ校長先生。

校長先生「皆さんこんにちは、」
全員「こんにちは…」 

   座って学校説明の話を聞き出す。

千里「…。」

   もじもじとしている。

千里(トイレ…やっぱりトイレ…)

   時間ばかりを見ている。

千里(どのくらいで終わるのかなぁ…)

   涙目でキョロキョロ

千里(んーっ…)

   おならの音が聞こえる。

千里「?」

   丸山が手をあげる。

丸山「ごめんなさい、僕です。」

   校長先生、にこにこ。周りからもクスクス。少し和やかな雰囲気になる。話が再開する。

千里(もれちゃう…もうもれちゃうよぉ…チョナーっ!!)


原中学校・給食ホール
   6年生全員、説明会を聞いている。

校長先生「と言うことでして、」

   健司が手をあげる。

校長先生「何だね?」
健司「先生、俺トイレに行きたいよ!!」
真道先生「こらっ、岩波くんっ!!」 
健司「だってへー我慢出来ないんだもん。」
校長先生「宜しい、行きなさい。」
健司「はーいっ、」
真道先生「場所は分かりますか?」

   校長先生に頭を下げて健司に引率する。学年中クスクス。麻衣も恥ずかしそうにクスクスする。こちらも
少し和やかな雰囲気になる。
 
清水「タケらしいや。」
岩井木「んだんだ。」
西脇「休み時間にしろっつーの。」
茶目子「御曹司坊っちゃんなのにあんな堂々と…嫌ね。」
野々子「恥ずかしい。」


諏訪中学校・給食ホール
   千里、ぼわーっとする。

千里(ん、も、もうダメ…っ…)

   ばたんと気を失って倒れる。

後藤「千里っ?」
小平「おい、千里!!大丈夫かよ?」
眞澄「金子先生っ、千里君が!!」

   金子先生が飛んでくる。

金子先生「一体どうしたっていうの?」

   会場は騒然。金子先生、慌てて千里を抱き抱えて退室


諏訪湖赤十字病院・治療室前
   千里、気を失った状態で眠っており、近くには金子先生、珠子、小口、夕子。看護婦は洲子と丸山先生。

珠子「先生、息子は…」
金子先生「小口君は、一体なぜ…」
小口「まさか何かの悪い病気なのですか?」
丸山先生「いえ、ご安心ください。」

   微笑む。

丸山先生「息子さんは、どこにも病気は見つかりませんでした。ただ今、治療室に運んで救急で処置をしていますが…」

   家族と金子先生が不安げに息を飲む。

丸山先生「どうも…」


同・治療室内
   看護婦や別の医師が治療処置をしている。

   軈て、苦しそうに顔をしかめてた千里も穏やかな顔になって眠っている。

   ベッドに寝かされて運び出される。千里、うっすら目を覚ましている。

珠子「せんちゃんっ!!」
小口、夕子「千里っ!!」
金子先生「小口君っ!!」
千里「先生に…みんな…」
洲子「少し様子を見ますので、数日入院をさせた方が宜しいでしょう。」


同・病室
   全景の人々。

千里「心配かけたね、ママ…パパ…ごめんね。」
珠子「いえ、せんちゃんのせいじゃないわ!!でも一体どうして?」
千里「僕…」

   恥ずかしそうに

千里「休み時間におしっこして、説明会前に一回行きたくなっちゃったからもう一回いって、でも…そして、玄関のところへ下ったら又、猛烈にトイレ行きたい感じだったから行ったのにやっぱりでダメで…そのまま我慢して、中学校へ行って…」
金子先生「そうだったの…なら小口君、先生に言ってくれれば良かったのに…」
千里「だって…」
洲子「何か不安や悩みがあったの?」 
千里「不安や悩み…」
洲子「もしそうだとすればそれが大きな原因かもしれません。」

   うっすら微笑む。

洲子「どこにも病気はなかったし、千里ちゃんはまだ若いんだもの、きっと神経的なものよ。特にあなたはナイーブですからね。」

   退室しようとする。

洲子「それではごゆっくり、お大事にね。千里ちゃん、もし又、おしっこしたくなったら遠慮なくナースコール押すのよ。ここは病院だからね、恥ずかしがらなくていいの。」

   出ていく。

   千里、なんとも言えない恥ずかしそうな顔をしている。

金子先生「それでは小口君、先生ももう行くわね。お大事に。早く治ることを心から願っているわ。」

   微笑んで出ていく。


   (夜になる)
   千里、夕食を食べている。

   食べ終わって箸を置く。

千里(ん、)

   もじもじとするが恥ずかしげにキョロキョロ

千里(まぁ…洲子おばさんなら…いいか…)

   そっとナースコールを押す。

   暫くして若くて美人な看護婦が来る。

看護婦「小口千里君、」
千里「はいっ、」

   看護婦をみて真っ赤になる。

看護婦「どうなさいましたか?」
千里「あの…その…えぇーっと、」

   もじもじと言葉がでない。

千里「…何でもないです…。」
看護婦「そうですか?」

   キョトンと

看護婦「おしっこはまだ大丈夫ですか?」

   千里、どきり

千里「は、は、…はい…」
看護婦「分かりました。では又何かございましたら呼んでくださいね。失礼します。」

   出ていく。

千里「あっ!!」
 
   再び横になる。

千里(あー…行っちゃった…。でも、とてもじゃないけど…あんな若くてきれいな看護婦の目の前でパンツなんて脱げないよ…。どうしよう…ママぁ…)


   (消灯)
   千里、時間が経っても眠れずに寝返りばかり

   (深夜2時)
  千里、飛び起きる

千里「やっぱりもうダメぇっ!!」

   ナースコールを押す。

   洲子が入ってくる。

洲子「千里ちゃん、どうしたの?」
千里「おばさんっ、早くしてっ!!僕身動きが取れないだろ?」

   点滴や検査のための機械が取り付けられている。

千里「もうもれちゃうよぉっ!!」
洲子「はいはい、分かりました。」

   がさごそ

洲子「こんな、卒業式間近になって…千里ちゃん可哀想。ずっと今まで元気で入院なんてしたことない子だったのにねぇ。」
千里「おばさんっ!!」
洲子「はいはい、」

   千里に瓶を渡す。

千里「ありがとう…」
洲子「とりあえずこれに、普通におしっこしてごらんなさい。苦しかったら、我慢しないで又言うのよ。」
千里「うんっ。」

   洲子を見る。

千里「何見てるのさ、おばさん…あっち向いててよ。」
洲子「ごめんなさい、ごゆっくり。」

   千里、ベッドの上で用を足し出す。

洲子「千里ちゃんどう?おしっこ出た?」
千里「ありがとう…大丈夫。」


柳平家と岩波家、其々麻衣の部屋と健司の部屋
   麻衣と健司、布団やベッドに入って熟睡中。

 
諏訪湖病院・病室
   やがて千里一人になるが、ベッドに入ってぐっすりと気持ち良さそうに眠りに落ちている。微笑みながら時々何度も寝返りを打っている

原小学校・図書室
   図書委員会の6年生と健司。

柳沢先生「それでは約束通り、今日卒業をする6年生の君達に、皆が希望した本をプレゼントします。それでは…」

   名前を読んで本を渡す。麻衣、健司も受けとる。

6年生全員「先生、ありがとうございました。」
柳沢先生「それでは、みなさん中学校へ行っても元気でね。頑張るのよ。さぁ、卒業式が始まります…早く準備をして教室に戻りなさい。」
6年生「はいっ。」

   戻っていく。

小口家・玄関
   珠子と千里。

珠子「さぁ、せんちゃん…。早く行きます。」

   千里、泣いている。

千里「嫌だよ、卒業式なんて出たくない…。」

   珠子に泣きつく。珠子、千里をそっと宥める。

珠子「そんなこと言うんじゃありません。卒業式が悲しいのは皆一緒よ。」

   微笑む。

珠子「小学校卒業のおめでたい日なのです、泣いちゃっていいから式に出ようね。ママも立派になったせんちゃんの晴れ姿が見たいわ。」
千里「ふ、ふ、…」

   泣いている。


原小学校・体育館
   卒業式が行われている。

   麻衣は目を潤ませ、他にも泣いている人がいる。軈て、卒業証書授与が行われており、始めに健司が取りに行く。

   暫くして健司、列に戻ってくる。目は潤み、頬が濡れている。

麻衣(健司…?…健司が…泣いてる…)

   健司のところをじっと見る。

健司「何見てんだよ?」

   手払いをする。

 
   最後に麻衣のピアノ伴奏で歌を歌って退場をする。


上川城南小学校・体育館
   卒業式が行われている。千里は、初めは涙をこらえているが、卒業証書授与の辺りで堪えきれなくなって号泣。

 
   最後に千里のピアノ伴奏で歌を歌って退場をする。


同・教室
   一人一人、金子先生に別れと応援の言葉を貰っている。

金子先生「小口千里君、」
千里「はい…」

   教壇の前に進み出る。

金子先生「小口千里君、君は、四年生の時に転校をして来てから色々とありましたが、初めに比べて随分強く男の子らしくなりましたね。優しさと思い遣りは君のとても良いところです。中学校へ入って、これから大人になってもその柔らかい心を忘れずに生きてくださいね。それと君は、とてもピアノが上手い。中学校に行っても頑張ってね。卒業おめでとう。」
千里「ありがとうございます…」

   ボロボロ泣きながら席につく。後藤、笑って千里をこずく。

後藤「この、泣き虫千里!!」
小平「でも、今日のこの涙だけは許す。」

   二人、千里を慰める。


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