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石楠花物語小学校時代
映画鑑賞会
同・更衣室
   健司、何食わぬ顔で着替えをしている。

岩井木「おい、タケ、」
健司「ん?」
岩井木「誰にも言わねぇからさ、」

   ニヤリ

岩井木「お前、」

   小声

岩井木「プールん中で小便した?」

   健司、ギクリ。

健司「ま、まさかぁ!!なに言うんだよ!!」
西脇「だよなぁ、んな訳あるはずないじゃん。変なこと聞くなよ徹、」
清水「まさか、そういうお前がしたとか?」
岩井木「バカいえっ!!だったらいいけどさ…プールん中でしたとしても、すぐにばれるぜ。」
健司「どいで?」
岩井木「ほいだって…」

   ニヤリ

岩井木「なぁ!!」
清水、西脇「うんっ、確かに…」

   頷く。健司、さぁーっと青ざめる。


バレエ教室
   麻衣、千里、同じクラスでアンサンブルを踊っている。

千里「でも僕、忘れてたよ。君とこうしてまたここで会えたんだよね。」
麻衣「私もだに。どう?学校は?」
千里「うん、顔馴染みの友達だしとってもいい環境だよ。ありがとう。それにしても君…」

   にっこり

千里「凄いね、今年の発表会のヒロインだなんて!」
麻衣「せんちゃんこそ、Bグループで」

   笑いを堪える。

麻衣「海賊のメドゥーラ踊るだら?」
千里「笑うなよ!!」
小口先生「こらっ、お喋りは後!ちゃんとレッスンに集中なさい。」
麻衣、千里「はい、ごめんなさい。」

   二人、真剣にレッスンを続ける。


同・出入り口前
   麻衣と千里、ジュースを飲んでいる。

麻衣「でもな、私、発表会よりも今、ここのワクワクしているものがあるんよ。」
千里「何?」
麻衣「これだに。」

   映画のパンフレットを見せる。

麻衣「今度友達に誘われたもんで、友達家族と見に行くんよ。」
千里「あ、これ今凄く話題の映画じゃん!!僕、この間小説読んだよ。」
麻衣「私も!あんたも、映画行くだ?」
千里「うん、行きたいな…ママに頼んでみようかな…」
麻衣「ほれなら…あんたも私たちと行く?」
千里「いいの?」
麻衣「うん、友達のお母さんにもほーいう風に話しとくな。」
千里「わぁーいっ、やったぁ!!」


   二人、帰り道を別れると、千里、有頂天でルンルンとスキップ

千里「麻衣ちゃんに誘われちゃった!!麻衣ちゃんに誘われちゃった!!うっきゃぁっーーーっ!!!」

   道行く人、みんな千里をみている。


原小学校・教室
   四時間目が終わる。

健司「やりぃーっ!!終わった!やっと給食だぁ。」
岩井木「アハハ、今日はタケが待ちに待ったバイキング給食だもんな。」
麻衣「バイキング給食?何ほれ?」
健司「くりゃ分かるよ。お、確か今日は俺達が給食当番何だよな!!」

   健司、ワクワクルンルンと浮かれている。

   そこへ、茶目子、野々子

野々子「岩波くん、随分楽しそうね」
茶目子「何かあった?」
清水「あぁ、こいつ給食が今日はバイキング給食だっつって浮かれているんだよ。」
野々子「ふーん、ねぇ」

   麻衣のところへ来る。

野々子「ところでまいぴう、」
麻衣「分かってる、分かってる!!映画のこんだら。」
茶目子「そ、色々打ち合わせってかしよ。」

   パンフレットを見せる。

茶目子「見てみて、また新しいパンフレットを入手したんだ。」
麻衣「すごーいっ!!」
健司「ちぇっ、」
麻衣「あんたも行くだら?話に加わる?」
健司「くわんねぇーよ!!」

   つんっとする。


   (やがて)
   給食が運ばれてきて、バイキング給食が始まる。

麻衣「おーっ!!これがバイキング給食!!」

   近隣のクラスからも食べに来る人がいる。麻衣もとって食べている。健司はガツガツ。


   さらに暫くご、清水が教室に飛び込んでくる。

清水「先生っ、先生!!」
真道先生「どうしたの、清水君!!」
清水「岩波健司くんが!!」

   息を切らしている。

清水「健司くんがトイレで吐いちゃった!!」
真道先生「えぇっ?」

   クラス中、食べながらもざわざわ。

麻衣「健司…大丈夫かやぁ?一体どーしただら?」
野々子「まいぴう、気にしなくてもいいよ、どーせいつものこんだで。」
麻衣「いつもの?」
茶目子「そ、ただの食べすぎよ。去年もあの子、同じことやってるのよ。そして戻ってくればけろっとしてまた食べてる…」
麻衣「んまっ、あきれた人っ!!」

   何事もなかったかのように、再び食べ出す。3人、クスクスと笑う。


同・男子トイレ
   健司が口を濯いでいる。そこへ真道先生

真道先生「岩波くん、どうしたの?」
健司「あ、真道先生…」
 
   顔をあげる

健司「お腹苦しくなったら気持ち悪くなっちゃって…」
真道先生「あなたねぇ、少しは加減をなさい。食べ過ぎです。」
健司「はい…気を付けます。」
真道先生「昨年も同じ事をしたようですね…篠原先生に今までのあなたの事、ちゃんと全部聞きましたよ。んもぉ、全くあなたって子はぁ。」

   健司、真道先生と共にトイレを出る。


上川城南小学校・教室
   千里、掃き掃除をしている。

   (チャイムがなる)
   千里、教室を飛び出る。

   暫くして戻ってくる。

後藤「お、千里。何だ?またトイレ?」
千里「うん、今日は何となくトイレが近くてさ、困るんだよ…」

   ため息

千里「授業…嫌だな…」
小平「授業中だってどうしてもいきたいなら立っていいんだぜ?」
千里「だって…金子先生怖いもん…とてもじゃないけど、いけないよ。」
後藤「そっかぁ。俺たちなら少しくらい怒鳴られたっていいけどさ、繊細なお前にゃ無理か…」

   装甲している内に千里、もじもじ。

後藤「ん?」

   千里、涙目

後藤「いいよ、行ってこいよ。」
千里「でも…」
小平「金子先生には、俺たちからいっておくよ。」

   千里、躊躇いながらも教室を飛び出る。

小平「あいつは、最近やけに便所近いよな…」
後藤「あぁ、そういえば…大丈夫か?」


   千里、トイレで肩を落としてため息。


同・教室
   五時間目の終わり。千里、金子一恵先生の机で話をしている。

千里「と、言う訳なんです…どうか、お願いします…授業中にトイレに立たせてもらっていいですか?もうもれちゃいそうになっちゃうんです。」
金子先生「分かりました…いいでしょう…。そういう事情があるのなら仕方がありません。私に言わなくていいので、立ちなさい。」
千里「はいっ、ありがとうございます!!」

   授業が始まる。図工で粘土細工を作っている。千里、作りながらも何度もトイレに立っている。


原小学校・校門
   全員、それぞれの家へ別れる。

紡「なぁ麻衣、」
麻衣「あ、つむ!」
紡「聞いたに、友達と映画行くんだって?」
麻衣「えぇ。」
糸織「いいなぁ…何の映画?」
麻衣「あぁ、あの、ヘップバーンのやつ。リマスター版の奴なんけどな、ほれ、今小説が見直されてベストセラーんなってるじゃあ、それと“燃えどらん”あれよ。」
糸織「いいなぁ、あれって今めちゃめちゃ有名じゃあ!!」
紡「あれ?」
麻衣「ん、つむ知らんだけやぁ?ほれ、“蜜蜂の花嫁になった家政婦”よ」
紡「あぁ!!」

   歩いていく。


小口家・台所

珠子「え、友達と映画に?」
千里「うん、僕もとってもみたい映画なんだ!!頼むよママ、ね、行かせて?いいでしょ?」
珠子「いーけーまーせんっ!!」
千里「どうしてさ?」
珠子「ママとパパが一緒じゃなければ行けません!」
千里「だったら、着いてきてよ。」
珠子「ダメよ、まだ頼ちゃんも忠ちゃんも小さいでしょ?とてもじゃないけど。」
千里「僕一人だって大丈夫だもんっ!!」
珠子「行けません!」

   千里、つんっとして去っていく。


   千里、いらいらしながら戸棚を漁っている。

千里(何さ、頭ごなしにダメダメダメダメって…。どうして僕を信用してくれないの?僕だってもう一人で遊びにいかれるもん。友達と遊びに行きたいのに…。)

   プリンスフレがある。

千里(あ、こんなところに美味しそうな!!)

   にこにこして取り出す。

珠子「あーっ、せんちゃーんっ、それは食べちゃ行けません。」
千里「なんで?」
珠子「それは、頼ちゃんのケーキなの。頼ちゃん、ケーキ落としちゃって食べれなくなっちゃったって言うから、あげてちょうだい。」
千里「何でさ、僕のおやつの筈だろ?」
珠子「またせんちゃんには買ってあげるから。」
千里「落としたのは頼ちゃんが悪いんだろ?僕は、学校に行ってきて、お腹ペコペコでおやつを楽しみに帰ってきたんだ!」

   ケーキを取る。

珠子「こらっ、千里っ!!」
千里「頼ちゃんはなにもしてないじゃん!ただ家にいるだけじゃん!!そんなの頼ちゃんに我慢させればいいだろ?」
珠子「聞き分けの悪いこと言うんじゃありませんっ!…お兄ちゃんでしょ!それくらい妹に譲ってあげなさいっ!お腹が空いたのならおにぎりでも握って食べなさい。冷蔵庫に味噌漬けと明太子があるわよ。」
千里「あーわかったよ、譲りゃいいんだろ、譲りゃあ!!」

   だんっとケーキを机において部屋をいらいらと出ていく。

千里「何が頼ちゃんに忠ちゃんだよ!!ママのバカっ!!」

   珠子、やれやれと鼻を鳴らして洗いものを拭き始める。


上川バイパス沿い
   後藤、小平、膝を抱えてなく千里。

後藤「ふーん…で、妹が生まれてからはお前の人権がほぼ蔑ろにされてるって訳か…」
千里「そうなんだ…」

   者繰り上げる

千里「今日の事だけじゃないんだよ。まだまだ色々あるけどさ…都合のいいときだけ“お兄ちゃんでしょ”、“せんちゃんはまだ子供なんですから…”いい気なもんだよね…。」
小平「よくあることだな。ま、俺は兄弟ないから分からないけどさ、」
後藤「俺も。でも千里、負けんじゃないぞ!!」
千里「へ?」
後藤「反抗して意地を張り通せ。」
千里「でも、そんな事したら今度はママに本当に嫌われちゃう…。」
後藤「バカ、本気で嫌われるわけないだろ?お前がどいでそんなにしてるのか、気付いてくれるかもよ。」
千里「えぇ…」

   小さくため息。


映画館・ロビー
   多くの人が集まっている。

麻衣「あ、」

   キョロキョロ

麻衣「おーいっ!!」

   茶目子、野々子、健司と合流

麻衣「今日はありがとな。」
野々子「いやいや何の!!」
茶目子「ところでまいぴう、もう一人友達誘うとか言ってたけど…」
麻衣「あぁ…彼?」

   渋る。

麻衣「彼多分…来ないかも…」
茶目子「え、何で?」
麻衣「お母さんが厳しくて一人じゃダメって止められてるみたいなの。」
野々子「そう…残念…」
健司「で、ほの友達って?何処の誰なんだ?」

   そこへ千里がかけてくる。

千里「おーいっ、麻衣ちゃんーっ!!」

   麻衣、振り向いて微笑む。

千里「ごめんね、遅くなっちゃった。」
麻衣「良かった。厳しくてとか言ってたもんで、てっきりこれないかと…」
千里「あぁ…なんとか僕、ママに言っていって、やっとお許しがでた。」
健司「千里?」
千里「え?」

   健司を見る。

千里「健司君…」

   野々子、茶目子を見る。

野々子「岩波くんの事、知ってるの?」
千里「うん、麻衣ちゃんの紹介で以前、一緒に遊んだことがあるんだ。」

   御辞儀

千里「申し遅れました、僕、小口千里と言います。諏訪から来ました。」
麻衣「ほ、せんちゃんこと千里くん。豊平小学校の時のクラスメートなの。」
野々子「へぇ、可愛いね君。男の子なんだ。私てっきり女の子かと思っちゃった。」

   クスクス

野々子「矢部川野々子。宜しく。」
茶目子「田島茶目子。仲良くしよう。」
健司「ほんで、改めて俺が岩波健司。宜しくなして。」

   千里、微笑む。

健司「んじゃ、中入ろうか?」
千里「待って!!」

   足の間に手を入れて駆け足。

千里「僕、おしっこぉ!!」
健司「ん、なら俺もおしっこ!」
麻衣「あっち、」

   指差す。

麻衣「んなら私、綿菓子と甘栗を買ってくる。」
野々子「お、いいねぇ!私も!!」
茶目子「私も!!」

   それぞれに行動。


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