[携帯モード] [URL送信]

石楠花物語小学校時代
健司の悪事

小口家・庭先
   大きな車に荷物を積んでいる。そこに珠子、小口、千里、小口頼子、小口忠子、源夕子、源洲子

小口「さあ、では乗って。そろそろ行くぞ。」 
珠子「そうね、ほらせんちゃんもね。」
千里「はい…」

   躊躇い勝ちに車に乗る。車、動き出す。千里、悲しそうな瞳で外の景色を見つめている。

麻衣の声「せんちゃんっ!!待って!!」

   走ってくる。

麻衣「せんちゃんってば!!」
千里「ん?」

   キョロキョロ

千里(麻衣ちゃんっ!?)
 
   窓の外を見る。

千里「パパ、車を止めて。」
小口「どうしたんだ、千里?」
千里「いいからっ!!」
夕子「何だ、どうしたんだい?忘れ物かい?」
洲子「千里ちゃんどうしたの?おトイレ?」

   千里、飛び降りる。麻衣、息を切らして車に追い付く。

千里「麻衣ちゃん、どうして?」
麻衣「出発前に、君のとこへ…って…お願いして出てきたの。」
千里「麻衣ちゃん…」

   麻衣、千里に小箱を渡す。

千里「?」
麻衣「これっ…マコロン…私が焼いたんに…食べてみて。」
千里「僕の…為に?」

   麻衣、強く頷く。

千里「ありがとう…でも僕は君にあげるもの…」
麻衣「んんん、いいの…これは私の気持ち。ほれと…」

   首にかけたペンダントをとる。

麻衣「これ、あんたにあげる。私の一番の宝物…」
千里「で、でも…」
麻衣「あんたに持っててもらいたいの…な。」

   千里の首にペンダントをつける。麻衣、微笑む。
 
麻衣「あんたにとってもよく似合う…別々の学校になったって、私のこん忘れないでな…。いつか、いつか必ず又再会しような。その時は又、会って遊ぼうな。」
千里「うんっ、僕こそ!!約束だよ。忘れるなよ。…君こそ元気で…」

小口「千里、行くぞ。そろそろいいか?」
千里「はーいっ、」

   寂しそうに涙を浮かべて微笑む。

千里「じゃあね…又今度…会うときまで…さようならっ!!」

   麻衣、去りがけに千里を抱いて口付ける。千里、紅くなってキョトンとする。

麻衣「せんちゃん、大好き…私こそ…又な。」
千里「うんっ!」

   車に乗り込んで、手を振る。麻衣も走り出した車を見送って、千里も窓から乗り出していつまでも手を振っている。

小口家・庭先
   諏訪市城南。小口家の全員が荷を解いている。千里、なだ泣いている。

珠子「せんちゃん、いつまで泣いているの?」
千里「ごめん、」

   涙を拭う。

千里「でも…又ここで暮らせるんだね。」 

   ニコニコ

千里「僕、とっても嬉しいや。みんなとも又会える。」

   そこへ後藤秀明、小平海里

後藤、小平「千里っ!!」
千里「みんなぁっ!!」

   かけよって抱きつく。

千里「どうして?」
後藤「たまたま遊びにいこうとしてここを通ったらお前が見えたからさ、」
小平「おかえり千里、又学校へ戻るんだな。」
千里「うんっ!!」

   満面の笑み

千里「明日から又、城南小学校へ入るよ。みんな又宜しくね。」
後藤「あぁ、」
小平「こちらこそ。」
千里「じゃあママにパパ、僕、…」

珠子「どうぞ、久しぶりだもんね。遊んできなさい。」
千里「やったぁ、ありがとう!!ママにパパ!!行こっ。」

   後藤、小平とともにかけていく。


車内
   柳平家が乗っている。

麻衣「なぁ、今度は原村の何処に住むだ?」
紅葉「分杭よ。」
麻衣「分杭?」
紡「あれ、でも前は上里って言ってなかった?」 
紅葉「あら紡、覚えてたの?」

   紅くなる。

紅葉「ただの間違えよ。ごめんなさいね。」
糸織「でも良かった…、上里何て言ったらかなり上だぜ?あんなとこ寒いし、第一行動が…」
麻衣「ほーいやほーね。」

   紡、麻衣の顔を覗き込む。

紡「ん、まだ千里君との未練があるな?」
麻衣「え?」
紡「ほーいう顔をしている。」
麻衣「ほんなこん、」
糸織「ふんとぉーは君、千里君のこん好きんなっちゃった?」

   麻衣、否定して手を振る。

麻衣「まさかぁ、ほんなこんないに!!」

   家族、笑う。


上川バイパス
   千里、後藤、小平

小平「こうやってお前といんの、はーるかぶりだな。」
千里「そうだね。僕もみんなと又会えて嬉しいよ。」

   3人、笑う。

千里「僕さ、豊平小学校へ転校したとき、僕と一緒に同じクラスに転校してきて入った子がいるんだ。」
小平「ほぉ?」
後藤「どんな子だ?」
千里「女の子…」

   うっとり

千里「とっても可愛いし優しい子なんだ…。でも僕シャイだから…」

   紅くなってもじもじ  

千里「とても、お友達になりたいなんて言えなかったけど…又どっかで会いたいな…会えればいいな…」
後藤「お前、その子の事が好きなのか?」
千里「まさかっ!!いやぁ!!そんなんじゃないよ!!」

   真っ赤になる。

後藤「まぁ明日から、改めて宜しくな。」
小平「まだ金子先生だから、怒らすと怖いぞ…遅刻するなよ。」
千里「うんっ!!」 

   3人、手を重ね合わせて微笑む。


原小学校・教室
   真道茶和子先生、麻衣。岩波健司は下を向いて消ゴムで遊んでいる。

真道先生「それでは、今日はこのクラスに転校生を紹介します。」

   健司、何となく顔をあげるが、目を丸くして麻衣を二度見。

麻衣「みなさん、柳平麻衣と言います。これから原村でお世話になります、小学校では一年だけだけど宜しくお願いします。」

   健司に気が付いて悪戯に目配せ。

真道先生「はい、ありがとう。それでは柳平さんは…」


   麻衣、指定された健司の隣へ座る。目をぴちぱちしながら見つめる健司に微笑む麻衣。


   (二時間目休み)

健司「お前…麻衣じゃん。どうしてここへ来たんだ?」
麻衣「あぁ…今度母さんが、原村で働くことになったもんでさ、」
健司「ふーん、いつから分かってたの?」
麻衣「随分前。」
健司「何だよお前!!ほれなら俺に一言話してくれりゃあ良かっただに。」
麻衣「ごめんごめん、でもあんたをびっくりさせたかったんよ。」 

   そこへ、岩井木徹、西脇靖、清水千歳、名取未央、平出望美、菊池秀一、田島茶目子、矢部川野々子

健司「とにかく、はーるかぶりだな。俺たち又、こうやって学校で一緒に勉強したりして過ごせるんだね。宜しく。」
麻衣「こちらこそ。」
清水「何々、いっちゃん。偉く親しげだなぁ。」
健司「あぁ、チーちゃん。こいつ、俺の幼馴染みなんだ。ひばり幼稚園のこんからの友達。」
岩井木「ふーん、かっわいいなぁ君!!こんなかわいい子、今まで原村で見たことないや。」
西脇「僕もだよ。」

   髪をかき揚げてウインク。茶目子、野々子、一気に岩井木、西脇に蹴りを入れる。二人、茶目子、野々子にも小粋なウインク。茶目子、野々子、おえっとして去っていく。

西脇「僕、西脇靖ってんだ。中新田。」
岩井木「僕は岩井木徹、やつがねからさ。」
清水「僕は清水千歳、払沢。」
名取「僕も払沢!名取未央っての。」
平出「俺も。平出望美!」
菊池「俺も払沢で、菊池秀一。」

   男子たち、麻衣にベタベタ。

菊池「おい、茶目に野々、お前らも何か言えよ。名乗るのは礼儀だろうに。」

   茶目子、野々子、戻ってくる。

茶目子「私は、田島茶目子。上里…」
野々子「私は分杭、矢部川野々子。」
麻衣「私は柳平麻衣。まいぴうってよく呼ばれる。てか、分杭って…私も分杭よ!!」
野々子「うわぁー、近いじゃん、すごーい、宜しくなっ!!」
麻衣「えぇっ!」

   全員、がやがやと打ち解けあっている。

健司「分杭?俺、払沢だぜ?近くだよな、俺、農協の近くだでさ、いつでも遊ぼうよ。」 
麻衣「もっちろんっだに!!」


城南小学校・教室
   机で千里がうっとりとして書き物をしている。

千里(まず僕は…高校を卒業したら、大学に行って、ピアノを学ぶの。)

 
   妄想しながら書いている。

千里(麻衣ちゃんとは、別れ別れになるけど、僕が大学を出たらあの子と再会するんだ…。そして、26才…僕はプロのピアニストとして歩みだす。そして、遂に30才…僕はあの子と…) 
後藤「何やってんだ?」 
千里「うわぁっ!!」

   あわてて紙を手で隠す。

千里「ご、とうくんかぁ…嚇かさないでくれよ…」
後藤「わりぃわりぃ…でも?」

   にやにや

後藤「何ぶつぶつ言いながら書いてたんだ?見せてみろよ。」
千里「嫌だよぉ、」
後藤「そんなこと言うなって…」
千里「嫌だってばぁ!!」

   教室内を二人、飛び回る。


原小学校・教室
   麻衣、茶目子、野々子

麻衣「え、何これ?」
野々子「あれ、知らないの?今世界中でベストセラーの小説よ。これ、2冊…ね。」
茶目子「今度映画化もするんだって!!しかも映画も二本立てよ。私これ大好き!」
野々子「私も!!」
麻衣「“燃えどらん”と“蜜蜂家政婦の花嫁”…かぁ。」
野々子「これ貸すでさ、まいぴうも一回読んでみてよ!」
茶目子「絶対にはまるでさ。」
麻衣「ほー?」
茶目子「映画も絶対に出来たら見に行こうな。」
野々子「どんな子達がやるんかしらぁ?」

   うっとり

野々子「お願い、私のイメージを崩さないでぇ…」 
麻衣「ふーん…?」

   本の表紙をまじまじ。


   麻衣、休み時間という休み時間に読んでいる。

健司「おい麻衣、又、ほれ読んでんのかよ?」
麻衣「待ってよ、もう少しで終わるでさ…」
健司「もう少し、もう少しって…」

   鼻を鳴らす。

健司「ほんねにこれ、面白いかよ?」

  

同・音楽室
   吹奏楽の練習が行われている。麻衣、茶目子に本を返す。

麻衣「はいっ、茶目ちゃんありがとう。とっても面白かった!!」
茶目子「でしょ、でしょ、良かった。」
麻衣「映画化はいつ?」
野々子「お、まいぴうも嵌まってきたね。来週から試写会が始まるみたいよ。」
麻衣「へー…おぉっ。もうほこまで出来ているのですね。」
茶目子「ほーなのです、もうそこまで出来ているのです。」 


   小粋にトランペットを鳴らす。

野々子「っと、その前に、お祭りパレードの練習でしょ。」
茶目子「そうだったそうだった。」

   麻衣はホルンを抱えている。

麻衣「お祭りって、なんのパレードだだ?」
野々子「今年はね、諏訪で大きな市があるのよ。それのオープニングパレードよ。諏訪6中の小中学校の吹奏楽部が出演するの。所謂マーチングパレードってやつ。」
麻衣「曲目は?」

   楽譜を見る

麻衣「威風堂々…って。ここはイギリスですか?バッキンガムパレードですかって?ほれと、二曲目は皇帝って…これは一体いつの時代のどこの国の何ですかって!!まさか、衣装とか…」

   野々子、茶目子、衣装のサンプルを見せる。

麻衣「…っぷ!!」

   吹き出す。


岩波家・台所
   岩波幸恵がお皿洗いをしている。

幸恵「え?麻衣ちゃんって…あの、宮川の?」
健司「あぁ。」
幸恵「良かったじゃないの!!仲良くするのよ。」
健司「うんっ、」
幸恵「それと健司、」
健司「またほの話?だでほんなのへー昔のこんだろ?俺だって冗談で言ったんだし忘れてくれよ。」
幸恵「いいえ、お母さん、少しでも可能性のあることはあなたにやらせてあげるわ。あなたみたいな男の子がやったらきっと格好いいわよ!!」
健司「だで嫌だってんば俺、ほんねに習い事ばっかりしたかないよ。」
幸恵「お母さんの言うことに文句は言わないのっ!!さぁっ、お教室にはもう連絡はしてあります。明日の午後、見学レッスンですよ。」
健司「はぁっ?」

   いやいやな膨れっ面の顔をする。

幸恵「とにかく健司、今日はこれからスイミングのお稽古でしょ?バスに乗り遅れてしまいますよ。急ぎなさい。」
健司「ちぇっ…ほーいっ…」


   しばらくして、健司、水泳袋をもって出掛けていく。

健司「行ってきまぁーす…っ。」


バスの中
  岩井木、清水、西脇とともにがやがやべちゃくちゃと話をしながらドンチャン騒ぎで乗っている。


茅野スイミングスクール
   更衣室でもやはりがやがやと着替えている。


屋内プール
   シャワー、消毒曹でプールに入る。暫く実技練習が続いている。

   バタフライ泳ぎを練習する健司。真ん中辺りで足をついて止まる。

健司(ん、何かトイレに行きたくなってきちゃった…更衣室入る前にしてくれば良かったかなぁ…)

   そこへスイミングの先生

健司「あ、先生、」

   ゴーグルを外す。

スイミングの先生「どうだい健司くん、行きなり難しい課題だが君ならできるようになると思って出した。どうだい?出来そうかい?」

健司「えぇ、何とか。」
スイミングの先生「なら、先生と泳いでみるか?」
健司「はい、」 

   先生、健司の横にぴったりとつく。健司、バタフライを泳ぎ始める。

健司(ヤバイ…これマジでトイレ行きたいかも…。終わって着替えるまで我慢できるのかな?)
スイミングの先生「健司くん、もっと頑張ってっ!!」
健司「はいっ、」  

   泳ぎながら

健司(でも、万が一我慢出来なくなっちゃったらどうしよう…いいや、分からない…泳ぎながらプールの中でおしっこしちゃおう…)

   知らん顔で泳いでいる。 


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!