serial story
9
「・・・?」
俺はわけがわからずに、斎藤を見る。
斎藤はその掴んだ手の方をじっと見ているだけで動かない。
張の方に、何コレ?という顔を向けてみても、肩をすくめ、わからん。という仕草を見せた。
「何だよ?」
俺はもう一度斎藤を見ながら、訊ねる。
すると、今度はゆっくりとその琥珀色の眼を俺に向けてきた。
眼が合った瞬間ドキッとしてしまうくらい綺麗な瞳。
俺は何も言えずにその視線に耐えていると斎藤が口を開いた。
「張、3日後までに言っておいた仕事全部片付けろ。」
「はぁぁ!!?」
斎藤越しに見える張がもの凄い壊れたような声を発している。
と、同時にみるみる内に顔が青ざめていった。
「そんなん無理に決まってますやん!!」
「無理ならことは端っから言わん。やれ。」
斎藤は俺に視線を向けたまま、表情一つ変えずにそう呟く。
っていうか、何で俺の顔みたまま話してんだ。
俺に言ってるみたいじゃねぇか。
「俺に寝るなっちゅうことですか、嫌やで!!」
「ほう、寝ずにすれば出来るんだな。だったら早くやれ。」
無情にも張の言うことをことごとく却下していく斎藤。
何でいきなりそんなこと言われてるのかわからんが、同情するぜ、張・・・!!
張はこれ以上何を言っても無駄と考えたのか、もの凄く肩を落として、扉へ向かって歩き出す。
何でいつもわいばっかこんな目に合うんや。
ボツボツと独り言を言いながら、張は扉の向こうへと消えて行った。
バタンと閉まった扉。
沈黙が部屋に続く。
何てこった、今この部屋には俺と斎藤の二人だけになってしまった。
一番避けたかったこの状況。
しかも、何故が俺の腕はつかまれたまま。
何がしたいんだろう、こいつは。
「おい、この手離せよ。」
そう言ったのに、斎藤は俺の腕を掴んだまま部屋の端まで移動する。
と、さっきまで張と座っていたあの西洋の椅子に腰かけさせられた。
「調子が良くなるまで、ここで休んでいけ。」
斎藤は俺の腕を離すと、俺の隣に腰を掛ける。
・・・ひょっとして、気遣ってくれてる?
何、この優しさ。
いつも、ツンツンしてて、冷酷っていう風に感じていたこいつの印象がほんの少しだけ和らぐ。
意外と優しいところがあるんだな。・・・俺は仮病だけど。
そう思いながら、再び座ったその椅子にもたれた。
それにしても、こいつは色々わからないところが多すぎだ。
元から、何を考えているのかなんてさっぱりだったけど、こいつの行動もさっぱりだ。
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