serial story
7
俺は、斎藤の言っている『何をしてる?』という質問よりも、そっちの方に気が行って何も考えられなくなる。
だって、ちょっとでも気を抜けば、斬られそうなほど、今の斎藤からはヒシヒシと殺気が伝わってきていたからだ。
俺たち二人は言葉をなくして、ただ斎藤を見るしかなかった。
コツコツと足音をさせながら、斎藤が俺たちに近づいてくる。
「何をしているのか、俺の質問が聞こえないのか?」
どこから出しているんだと言うような低い声から、なぜか怒りを感じた。
何で斎藤が怒っているのかも、そんなことを聞いてくるのかもさっぱりわからなかったが、とりあえず身の危険だけは感じる。
この前のように逃げようかと思うも、そんなことできるわけもなく。
さっきの張の気迫なんかこれに比べたらかわいいもんだ。そう思うほど。つまり、動くこともできない。
「おい、張。俺を怒らせたいのか?」
もう怒ってますけどー!!!
多分、張もそう思ったと思う。
「べっ、別になんもしてませんがっ。」
上ずった、やっと絞り出せたという張の声が聞こえた。
あぁ!!まさか、張の仕事を俺が代わりにやるっていうのが聞こえてたんじゃ!!?
それは、まずいだろう。怒られるだろう、怒られるで済むのか!?斬られるのか!!?
「これが、何もしてないっていう状況か?」
・・・。。
は?
状況・・・・?
俺は一瞬聞き間違いか?と思うが確かにそう聞こえた。
状況?
状況って・・・。
えっと・・・、俺がしゃがみこんでて、張が俺の頭撫でてたから手が頭に乗ってて、半分脅されてたから俺は涙目で・・・。
どういう状況だ、これ・・・。
でも、別にさっきの件がバレたってわけじゃななさろうだ。
斎藤は、今の俺たちを見て怒ってる。
でも、なんで・・・?
その鋭い目をこちらに向けながら、斎藤は俺たちのすぐ前までくると、俺の頭に乗ったままの張の手を払いのけ、腕をグッとつかんで俺を立たせる。
と、そのま抱き寄せられるように斎藤の背中の後ろへ回された。
俺にとっては、今現在のこの状況の方がわからない。
別に、張が俺に何かしたってわけじゃないのに。一体どんな勘違いをしてるんだ、斎藤は。
俺は、チラリと斎藤を後ろから盗み見る。
僅かに見えるその顔はどうみても、張を睨みつけていた。
「こいつに何をしてた?」
何って、別に何もされてないんですけど。
と思いながら、斎藤の背中越しに今度は張の方を見る。
張は、キョトンとし顔をしていて、さっきまでの強張った顔は若干緩んでいた。
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