happy
「ねェ、阿伏兎。今日はなんて清々しい日なんだろう」
両手を広げながら、にこやかに神威が微笑む。機嫌が良いのが何故かなんて、この場に居れば十人中十人が分かるだろう。
春雨として恐れられる軍艦船着き場にしてホール、その壁にはこの場には似合わない第七師団団長兼提督様の誕生日だと知らせるカラフルでどデカな貼り紙。そして主役とも言える神威は祝いを名目に酒を呑み交わす部下達に囲まれホールを見渡せる高台に居座っている。
……そう、今日6月1日は神威の誕生日だった。
「ほォ、そりゃ良かった。今日はいくら呑んでも文句言わないんで、楽しんでくだせェよ」
そんな上司を見上げる様に高台の下から返事をした阿伏兎が、苦笑いを隠さずにそう告げた。戦闘民族の夜兎達がカラフルな飾りに囲まれてワイワイと騒いでいるのだ、そりゃあ苦笑いもでよう。
「うん!端からそのつもりだよ……阿伏兎も此方来て呑みなよ」
「俺は後始末しなきゃいけないんで、団長達だけで呑んでください」
クイクイと手を振り隣を指差した神威に、阿伏兎はピシャリと言い放つ。誕生日くらい甘えさせてもいいじゃないかと誰かは言うかも知れないが、全員が酔っぱらうという最悪の事態を避ける為には仕方のないことなのだ。
「……えー、阿伏兎も呑もうよ」
それが分からないのが当たり前な、神威であるのだが。
「みんなして酔い潰れたら大変だろォが……俺は見回り行ってくるんで、文句言わねェで祝われててください」
言うや否や踵を返し歩き出した阿伏兎はそのまま一歩を踏み出そうとしたが、それは背中にのし掛かる熱によって防止される。後ろを振り返れば高台に居た筈の神威が背中にピタリと張り付いていた。
「……なンすかね?」
「阿伏兎が居ない誕生会なんて、つまんないよ……みんな上部だけの御祝いなんて聞き飽きた」
そういって人前だと言うのに構わず背中に擦り寄る神威に溜息一つが零れ落ち、その頭へと無骨な手が不慣れに滑り撫でられる。
「そー言ってくれるな、部下や元老にわざわざ祝われてるだけでも有難いと思っとけ」
「……阿伏兎は?」
「あ?」
「阿伏兎からの御祝いの言葉はないの?」
無意識にもその手に擦り寄りながら神威が問い掛ける。同時にホールからは死角になる暗がりへ身を引かれると、そのまま額に何かが当たる感触と目の前に阿伏兎の鈍い金髪の色が広がる。
キスされたと気付いた時には既に阿伏兎は背を向け、
「誕生日、おめでとうございます。……これからも俺を惹き付ける様な団長様でいてくださいよ、愛してる」
と告げて言い逃げするように去って行った。
背を向けたその耳が赤くなっていた事と、残された神威がニヨニヨと先程より爽やかな笑みを見せ子供のように頬を染めていた事は、神威以外の誰も知らない。
happy birthday
(愛しいアナタへ!)
(ねェ、阿伏兎。プレゼントは?)
(…あ…き、今日1日。出来る範囲の願いは全部聞いてやらァ)
(……もしかして、プレゼント忘れてた?)
(………はい)
―――――
急いでたから殴り書きすいません(m´・ω・`)m
happybirthday!神威!
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