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あぁ、頭痛治らないかな。

みんなで集まって勉強会を開くのは週に二回の習慣になって、氷川神社に集まってあぁでもない、こうでもない、と論議を交わす。そう、論議を交わすようになってから、レイはぼんやりと考えている。思い出すのは前世の終わる瞬間、前世のセーラー戦士を庇うように死んでいったあの人の顔。誰だか知らなかったけれども、段々と日に日に浮かんでいくあの表情は間違えない、はじめのものだと、思って仕方ないのだが、妙に切り出しにくい。急に前世の話なんてしても、言い出しにくいしいきなりどうしたの?なんて言われても仕方ない。

「…もーしもーし、レイちゃーん?」
「ん?どうしたのよ、ちょっとびっくりするじゃない」
「いや、この頃。っていうか、はじめちゃんが戦士だってわかってから様子がおかしくない?」
「そう、かな?」

あははは。と笑って見せても、どう見てもおかしいかと、レイの中でそう判断を下した。これ以上隠しても無駄かと、思って割り切ってぽつりぽつりと言葉を出し始めた。すべての始まりはそうだ。あの無限学園の中に入って、心を盗まれてもなお、私たちを守ろうとするその姿を切っ掛けにあの顔を思い出したのだ、彼女の前世とプリンセスを庇い無くなる命を。「思い出したの。私たちが知らない戦士が死んでいく瞬間を、」そう言葉を濁せば、「前世は、あなたたちとあんまりかかわってないわ。」静かな声が、レイの私室を走って、好奇の様な視線が走ってはじめは身を強張らせた。それを悟られないような表情で、疲れたとだけ、漏らした。、熱は?と聞かれたから「治った。」もちろん嘘だが、解熱剤は飲んでいるので気分はいい、ただ家にいてもよくなる気配はないんだ、仕方ないと割り切って、美奈子さんの横に座る。

「聴きたいのは前世の話?それとも、未来。かしら?」
「未来、って、はじめちゃん未来の人だったの?」
「なわけないでしょうが、私はこの時代の人間。」

言ってみたかっただけ、と言ってから話を続けた。そういえば、前世の話だったのよねー。と、過去を振り返ってみる、あんまりよくは覚えていないが、それなりに知っている事を話そうと思っている。そう切り出して、話を戻す。

「シルバーミレニアムからとても離れた星、エリス。そこに一人の戦士がいた。」

彼女の使命は太陽系外部からの侵入の排除。常に孤独と、虚無に戦う女がいた。沈黙を保ち、太陽系を保つための秩序として、私たちはそこにいた。とてもつつましやかに暮してたわ。ただ、外からの侵入用の戦士だから中の動きまでは知りえることはできなかった。内部で急襲があったと連絡を受けてすぐに駆け込んだわ。でも、もうそこはすでに廃墟に近い場所で、最後はセーラー戦士を庇って死んだ。そんな、馬鹿な女の一生。生まれ変わっても、背中の傷は変わらない。今も痣として残っている。それから、今に転生してね、妖魔やらなんやらを倒しながらあなたたちとの接触を待っていたの。多くは語るつもりはなかったのでここで切り上げようと思っていたが、亜美さんが食いついた。

「待って、妖魔って。」
「ダークキングダム時代から、私は戦士をしているよ。」

控えめに妖魔しか撃ってなかったし。あのときは丁度、セーラーVが動いていたからちょうどいい隠れ蓑というか、なんというか。言葉を濁していて、話を終了に促す、うん、解熱剤の効き目もなくなってきたかも。丁度いいや、帰ろう。面倒だし。区切りがいいところで帰ろう。と、腰を浮かせた、ちょっと世界がふらついているように見えるが、うん熱のせいだ。なんかいもぶっ倒れるほど、私は柔じゃない。今の現状だっていつか終わるのだから、平気だ。

「もう、帰っちゃうの?」
「ま、近くを寄っただけだし。家に帰って夜ごはんの準備をしないと、妹たちはお腹をすかしちゃうし、買い物ついでだもの。じゃあね、また明日」
「変な人に気をつけてね。」
「わかってるって」

簡素な挨拶をひとつして、私はサッサと氷川神社から飛び出すように出て行った。明日も学校憂鬱だな、なんて思いながら家の近くのスーパーに向かっていく。段々足取りが重くなっているような気がする。あぁ、頭痛治らないかな。ため息をついて、町の中を歩きだした、外はちょっと暗いし、少し怖いな。なんて思いながら歩く。…うーん、嫌な予感がする。気のせいか?
昔から嫌な予感、というのは当たる。妖魔だったりダイモーンだったり、襲われたりなんだりかんだり、当たってしまう。



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あきゅろす。
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