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「我が魔法をかけてあげましょう。」

くすり。と笑って、腕を組む。布の間から伺える黒い髪が風に揺れた。万が一に備えての装備、まさかほんとに万が一が来るなんて。サメラは深いため息を吐いた。念には念を入れてしっかり身分を装ったのは正解だった。銀は珍しすぎる。

「クラン。先に行くよ。」
「えぇ、勿論、行きますよ。バロン王。」
「ローザはローザ、なのに僕らは王なんだね。」
「王はあなた方しか居ないでしょうに。ハーヴィ王。」
「もとは一人の人間さ」
「…平等を尊ぶ人ですか」
「格差ない世界が夢だからね」

そうですか。セシル。
と簡素に返して、先頭を歩く。
ハーヴィ王から、セシル。と呼称を変えた。奇妙な顔をして、足を止め、クランを見つめた。視線が気になってか、振り返る。どうかしたましたか?と問い掛ければ。柔らかく彼はなにもないよ。と答えをくれた。

「サメラ?」
「ポーリュシカみたいに私をサメラと間違えてるんですか?セシル。」
「サメラの姿が見えたような気がしてね。で、ポーリュシカみたいに。って、あの子うっかり屋さんみたいには見えないけれど。」
「見えてないんですよ彼女。」

生まれつき眼病により見えてないんですよ。気配と臭いで彼女は見えてるように装ってるんですよ。

「これ以上はフェアじゃないのでご本人にお尋ねください。でもまぁ。」

我々三番目の魔術師-Maniac Replica-は、異端の集まりだという事をお忘れなく。
くすり。と笑ってクランが先に先に歩く。

「ねえクラン。三番目の魔術師-Maniac Replica-は異端の集まりだと言うならば、君は何が何が無いんだい」
「私は心を持たぬ道化故に、人の気持ちを汲み取るのが苦手でございます。」
「それは役。として?」
「さぁ、それは貴方が決める事ですから」
愉快そうな声、というような例えがピッタリな程の声色が揺れた。クスクス笑ったクランは浮き足立つような奇妙な足取りで先陣を歩き出す

「ローザさん、大丈夫ですかな?」
「えぇ。」
「我が魔法をかけてあげましょう。」

ひそりひそり。と耳打ちをしている姿を眺めてクランが耳打ちを止めれば嬉々としたローザが本当に!と声を上げた。

「きちんと調べてから正式に発表がよろしいかと。」
「何の話?二人とも」
「内緒。」

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