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ウルシュア…いや、アーシュラでいかがでしょう。

ファブール城について、一目散にヤンの自宅に駆け込むと赤子が泣いた気がした。

生まれたわ!声を引き金に、皆尚一層急ぐ足を早めた。そんな彼らと接点を持たないクランが共に行くのも可笑しいと思い、城前で待機をしようとしていたが、ローザに掴まれ無理矢理登城する羽目になった。

「あんた。」
「生まれた…か。」
「とても元気な女の子ですよ。」

産婆がファブール王妃から王に渡り、嬉しそうに笑う。腕の温もりにファブール王は感嘆とした声を漏らし、感動に打ちひしがれている。のが伺える。

「…なんと、か細く暖かい。」
「なぜ、今まで教えてくれなかったんだい?」

セシルが問い掛ければ、恥ずかしそうにファブール王は、せっかくの式典に水をさしてはと思ってだ。と放てば、セシルはうんうん頷いてヤンらしいね。と笑い返した。

「セシル殿、一つ頼みがあるのだが。この子の名付け親になっては貰えぬだろうか?」
「いや、僕よりも、もっと相応しい人がいるよ。きっと君が居なかったら、生まれた瞬間も遅れたんだから。きみがつけてよクラン。」
「…は…?」

いきなり名前を呼ばれ、驚いたようにクランは声を上げた。いや、かなり聞いて無かったので、寝耳に水。とでも言うべきだろうか。

「私のような者がそのような事は出来ませぬ。」
「いいよ、君が言った名前なら、僕が言ったことにしようじゃないか。」
「…何を言っても聞きそうに有りませんね。ファブール王、王妃、よろしいですかな。」
「セシル殿が信頼するクラン殿ならば。」
「でしたら、私めが。」

ウルシュア…いや、アーシュラでいかがでしょう。してやったりな笑顔で微笑んで見ると、ヤンも納得したようにふむ。と、頷いた。

「聖なる少女という意味ね。」
「アーシュラ。素晴らしい名前をありがとう、クラン殿。」
「いえ、私は提案だけ。決めたのは貴方ですよファブール王。」
「素敵な贈り物をよかったね、アーシュラちゃん。」
「クラン殿、アーシュラを抱いてやってはくれぬか。」

名付け親だ。と言う権限で無理矢理抱きかかえる羽目になったクランの腕の中でも、大人しく眠るだけであった。

「子は暖かいですね。私よりも、ご母堂がこのアーシュラ嬢も幸せそうなので。」
「ありがとう、クランさん。」

そんな幸せムード漂う部屋を飛空挺が掻き消した。

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