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01-03



横野は学年に一人はいそうな超真面目学級委員で、キッチリと校則や係りの仕事をしないと、またはクラスメートがそれを守らないと頭に血がのぼる口喧しい女子生徒。

当番の俺が朝清掃をしていないことに憤怒して、注意を促してきたようだ。


俺の学校には朝清掃というクソメンドクサイものが存在する。

朝のSHRが始まる十分前から清掃が始まるんだけど(簡単な教室や廊下掃除をする習慣があるんだ。当番はグループごと)、時間になっても動かない俺に横野はカチンときたらしい。

はいはい、やるって。日陰男子っつーのは、こういう女子の言葉に従うしかないんだよな。

俺は腰を上げて掃除用具箱に向かう。


こうして俺は気鬱な気持ちを抱いたまま、朝清掃を開始。

当番じゃない薄情者三人組は、廊下掃除を始める俺に何があったのか、しきりに声を掛けてくるけど返せるの溜息ばかりだ。


どうしても話す気分になれない。

俺の気持ちが整理できていないのに、話せるわけないだろ。

掃除を終え、朝のSHRが始まる呼び鈴が鳴る。

学内に響き渡る呼び鈴に、のんびり廊下を歩いていた生徒達は駆け足で教室へ。

俺も掃除道具を片付けて自分の席に戻った。が、事件はこの直後に起きる。


「よっこらしょ」


ダルイ掃除を終えた俺が椅子に腰を下ろしたとほぼ同着に、



「ケーイ!」



不慣れなあだ名が教室に響き渡った。

クラスメートは学年の問題児の出現に度肝を抜き、俺は軽く腹部を押さえる。


嗚呼、この声は。

おずおずと廊下に視線を流せば、金髪に赤のメッシュを入れているイケメン不良さまが窓枠から上体を乗り出していた。

お前を見るだけで泣きそうになる俺がいるんだけど!


荒川庸一(通称:ヨウ)は、俺に用があるみたいで呼び鈴を総無視。

堂々と教室に入って着席している俺の前に立った。

おいおい、注目度マックスなんだけど! なにこのヤーな注目!

「はよっ、ケイ。やっぱテメェ、朝から学校にいたんだな。ケイは朝から学校いるって言ってたから、久しぶりに朝から登校しちまった」

ニッと笑みを向けてくるヨウに、俺は心中でツッコむ。

朝から登校はフツーだろ、フツー。

表向きの俺は、そりゃもう愛想良く「ヨウ。おはよう」と返してやった。


だって愛想良くしねぇと怖いもん。怖いんだもん不良! てか、チャイム鳴ったよ。自分のクラスに行けって! 俺の前から消えてくれ!


なーんて小生意気なことも言えず、

「ヨウ。お前、メシ食ってないのか? 腹の虫が鳴いてるぞ」

当たり障りのない話題を出して自己防衛策を取る。


「食う暇なかったんだって。しっかも眠い眠い。ダリィな、朝から学校ってのも。寝不足だ、俺」


A―HAHAHA! 俺もお前のせいで軽く寝不足だよ!

不良の舎弟になっちまったんだぜ?! そりゃ寝不足にもなる。

「そうだ、なあケイ。ふけようぜ」

「え?」

いきなり何を言い出すんだ、お前は。

「ふけるって」戸惑う俺に、「サボろうぜ」折角朝から来たんだし、サボらないと損々、ヨウは当たり前のように語る。


お前、何が折角で、何がサボらないと損々だよ。

授業を受けろって。欠課が増えたらお前、進級できなくなるぞ。


「テメェに絶好の場所を教えてやる。行こうぜ」

「い、行こうぜって。あ、ちょっと、あら……じゃない。ヨウ!」


勝手に決めるなっつーの!

でも何も言えない。ノーなんてもっと言えない。そんな度胸あるならとっくに、舎弟の件はお断りしているよ。

俺は泣く泣く席を立って、教室を出る舎兄の後を追った。

「遅ぇ早くしろよ、先公来ちまうだろ」

毒づく舎兄はこっちだと先導してくれる。が、ありがた迷惑な先導だ。

(ううっ、まさか昨日の今日でサボリに誘われるなんて)

断れない俺、乙。

心中で涙ぐみながら、俺は舎兄と一緒に人生初のおサボりを経験することになった。



「ま、マジかよ。田山! 何があったんだ!? たやまー!」

「これは、冗談抜きに心配かも。圭太くん、大丈夫かな」

「やばい系か? 田山、無事に戻って来るといいが」

残念なことに、俺の耳には薄情者三人組の心配する声は聞こえていなかったという。



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あきゅろす。
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