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01-02



嘆きながら立ち上がった俺は、頭上に雨雲を作ってトボトボと教室に向かう。

あまりの落ち込みように光喜も、「マジでなんかあったのか?」と腫れ物を触るような接し方だ。


ははっ、だがしかーし、俺は立ち直れないね。立ち直れるわけないだろ。


だって不良と関係を以下省略。

兄弟になって以下省略。

俺の高校生活は暗黒に以下省略。


人生に絶望しながら教室に入ると、俺を見捨てた奴そのニ、そのサンが教室で待ち構えていた。

ニヤニヤと笑いながら、

「あ。圭太くんだ。怪我はしてなさそうだね」

嫌味ったらしく言ってくる薄情者そのニ。小崎 透(おざき とおる)。

「制服の下はどうなんだ?」

些少の同情を向けてくる薄情者そのサン。五木 利二(いつき としじ)。

どっちも地味グループに所属している日陰組男子だ。

俺とつるんでいる“地味友”とも呼んでいる。


挨拶代わりに昨日はどうだった、と聞いてくる薄情者達。


くっそー、分かるんだぞ。

内心じゃ「昨日何があったんだよ? どんな恐怖があったか聞かせろよー。笑わせろよー」とか思っているんだろ! 俺がお前等だったら同じことするんだ。

お前等も絶対にそう思っている筈! 地味な分、共通点があるしな。


普通だったら不貞腐れて対応するところなんだけど、今の俺は限りなくヒットポイントがゼロに近い。


遠い眼を作って、ヘラヘラヘラ。ケラケラケラ。あははのあははは。

ショックを通り越して笑う他なかった。もはや現実逃避の領域。


「やあ、透くん。利二くん。今日も元気そうだね。ぼかぁ嬉しいよ。これからも、素敵学園生活をエンジョイしな。俺、陰ながら応援している。そう、陰ながら……陰ながら。日向化もしれねぇけど。俺は今日から日向デビュー。嬉しくねぇ」


俺はどういう学園生活になるんだろう、想像するだけで胃が断末魔を上げそう。

ズーンっと落ち込みながら、俺は自分の机に着席。

通学鞄を置くや否や、机上に伏して自分の不幸を嘆いた。


「なんで俺っ、俺なのっ、俺なんでしょう!」


荒川庸一さんよ、べつに俺じゃなくたって良かったじゃないですか。

兄弟になるならもっと素敵な人がいただろうに、なんで俺なの!

イケメンくんと地味くんじゃ大差があり過ぎて、俺の存在が霞むじゃあーりませんか!

なに、俺という名の地味を横に置くことで己を煌めかせるとか?

だったらふざけるんじゃねえぞこの野郎。

これだからイケメンという生き物は嫌味なんだ!


……いやそれ以前の問題か。どうしようかね、ほんと。

うーうー唸っていると、「田山」本当に大丈夫か、光喜が声を掛けてきてくれる。


「まさか苛めのターゲットになったのか? お前」


いえいえ、楽しく談笑しましたよ。苛められてはいません、今のところは。


「圭太くん。どうしたの? 冗談抜きに、その落ち込みようは尋常じゃないよ」


尋常じゃないでしょうね、そりゃそうでしょうね。

だって俺、あいつと兄弟になっちまったんだもんっ! あいつは兄貴、俺は弟……タメなのに兄弟になっちまったよ!


「田山。良ければ話してくれないか。笑い話にしたいんじゃない。純粋に心配しているんだ」


利二のイケメソ。フツーくんのクセにカッコイイこと言ってくれちゃって、惚れてまうやろ。

さっきとは打って変わって心配してきてくれる薄情者三人組に俺は、ちょっち感激していた。

それだけ俺の落ち込みようは凄まじかったってことだよな。


だけどさ、フツー落ち込むし、悩むだろ。

学校一恐ろしい荒川庸一の舎弟にされたんだぜ? 悩まない平々凡々日陰男子なんて、そうはいないぜ。

これに悩まない男子生徒は、よっぽどの能天気野郎かお気楽野郎、楽観主義者だって。

三人の心配は受け止められても、話す気分になれない俺に追い撃ちを掛けるように、「ちょっと田山くん」クラスメートのひとりから声を掛けられた。

顔を上げれば、めっさ恐い顔をして仁王立ちしている超真面目学級委員(♀)の姿が。


「田山くん。今日の朝清掃当番は貴方でしょ」


キリッと眉根をつり上げてくる。


彼女の名前は横野 梓(よこの あずさ)。


とても気の強い奴で、眼鏡越しに睨み付けてくる眼光の鋭さはこっちがビビッちまうほどだ。



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